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デジタルネイティブ世代の採用について


デジタルネイティブって言葉をご存じでしょうか。

その定義はいまだ議論の最中ですが「学生時代からインターネットやパソコンのある生活環境の中で育ってきた世代」がデジタルネイティブとされます。

Wikipediaによれば、心理学者の橋本良明氏は「インターネット黎明期より積極的に関わった1976年前後生まれの世代と、携帯電話での利用が目立つ1986年前後生まれの世代、更に1996年前後生まれのネオ・デジタルネイティブ世代と区分しているそうです。

それでいうと現在20歳以下の人たちは生まれながらのデジタルネイティブといえ、ネットなしでの生活は想像しえない世代ともいえます。

この生粋のデジタルネイティブ世代はその特性からネットからの影響がダイレクトで、経験が少ない分、ネットがすべてとなっても致し方ない。それくらいネットと生活が切っても切れない結びつきを持っているとも言えます。

そうした社会の変化によって、「情弱」いわゆる「情報弱者」という言葉も生まれ、デジタルネイティブ世代ゆえに情報技術を活用できる層「情報強者」とそうでない層「情報弱者」の間に格差が拡大していくデジタルデバイド現象が生じます。

いかなる時代においても、最先端の技術を駆使できる層とできない層が生まれるというわけです。

「情報弱者」は情報・通信技術の利用に困難を抱える人が陥りがちですが、情報・通信技術が安価で普及してきた今、技術的および環境的な問題よりも情報そのものをどう扱えるかによって「強者と弱者」に分類される傾向も出てきました。

「情報弱者」はネットの情報に騙されるだけでなく、振り回される、ウソやデマの拡散に加担してしまう、SNSを誤った方向で使用してしまうなどさまざまな問題が噴出しています。

そこで言われるようになったのが「情報リテラシー」です。

「情報リテラシー」とは情報が必要なときに、それを認識し、必要な情報を効果的に見つけ出し、評価し、利用することができる能力と言っていいと思いますが、氾濫するネット情報をどう評価してうまく利用できるかが問われています。

現在、大学等でのデジタルネイティブ世代に懸命に「情報リテラシー」の教育を行っているようですが、数々の炎上事件を振り返ると、まだまだその教育は浸透しているとは言えないのでしょう。



受験生はPCよりスマホで検索




現在の大学生前後の年代、デジタルネイティブ世代はネットと切っても切れない生活を送るゆえ、大学選びにもネット検索が盛んです。

かつてはそれもパソコンであったものがスマホの普及でここ最近は一気にスマホ検索の比重が高まりました。

少子化により大学全入が言われるようになって久しいですが、日本私立学校振興・共済事業団による「平成27(2015)年度私立大学・短期大学等入学志願動向」によれば、調査した大学579校、短期大学315校のうち、平成27年度に定員割れとなった私立大学は、全体の43.2%となる250校という結果が出ています。

平成27(2015)年度私立大学・短期大学等入学志願動向

約半分の私立大学が定員割れという恐るべき結果なんですよね。大学全入時代になって、勝ち組と負け組が明確に二極化してしまったということでしょう。

先の調査集計校579校の平成27年度の入学者数は約49万人ですが、このうち入学した大学を中退してしまう学生が約6万人近くにのぼり、退学はしないものの大学生になりながら翌年以降別の大学を再受験をする「仮面浪人」が約4万人もいるという試算もあります。

つまり、入学者数49万人対して、約10万人、20%の学生が入学した大学に不満をもって別の大学に通いたいという意向を持っているということです。

そして、この20%、約10万人の学生の多くは定員割れしている大学の中に多く含まれると予測され、負け組の大学からさらに勝ち組の大学に学生が流れていく傾向になっています。

こうした入学したのに不満を持つ学生はいかようにして大学を選んだのか?

というより、こうした流動化は学生だけでなく、社会人にも起こっていて、厚生労働省の平均退職率では、3年以内に離職する割合は大卒新卒者が3割、高卒新卒者は5割となっており、大学入学者の中退および仮面浪人の比率と大差がないことを見ると、とりあえず大学へ、とりあえず社会人にという流れが一般的なのかもしれません。

それは批判されるべきものではなく、そういう時代になったのだと考えるほうが自然なような気もします。

かつての一度入れば最後まで勤め上げるスタイルは崩壊し、サラリーマンの平均転職回数は生涯で2回とも3回とも言われる時代です。それは社会人でも大学生でも同じなのでしょう。

より良い場所を求めて移動していくことが悪ではないという社会の風潮もありましょう。

その流動化を是とするなら、よりよりキャリアアップのためにも一度目に入学する大学や会社の重要性は増すのではないか。逆説的ですがそんな気もします。

そこで今回取り上げている大学入学に関して言えば、入学したのに不満を持つ学生はいかようにして大学を選んだのかが問われてくるのではないか。

ここに情報リテラシーが求められ、情報格差「デジタルデバイド」の結果が出てきているのではないかと思えるのです。



大学の炎上騒動は大きなリスク




ネットエイジアリサーチによる「大学選びに関する調査2014」の結果が公表されています。

大学選びに関する調査2014

この調査によれば、情報収集の対象となる大学は「興味のあるキーワードで検索してヒットした大学」が4割で、「よく広告を見る大学」に関心を持つ受験生は1割強しかいません。

また、受験生のハートを掴むためには「広告」よりも「知名度」「オーガニック検索」「口コミ」「話題性」が重要とされているという結果も出ています。

具体的には

どんな大学に好感を持つか(持ったか)を尋ねたところ、

「知名度の高い大学」34.4%
「自分の偏差値・学力に合った大学」34.3%
「興味のあるキーワードで検索してヒットした大学」32.3%
「人(親・先生・友人など)から勧められた大学」24.1%
「よく話題にあがる大学」23.4%
「よく広告を見る大学」12.7%

となっており、

普段からインターネットを主な情報源とし、多量の情報に接している若年層の好感度を高めるには、広告による接触量を増やすのみでは充分でなく、SEO対策などの、彼・彼女らが能動的に情報収集をする際に目につきやすくする施策や、親や教師の世代も対象に含めたバズマーケティングなど、口コミで話題になるような施策がより重要になってきているのではないだろうか。

加えて「学生が不祥事・炎上を起こした大学は志望意欲減退」は5割弱が反応し、炎上騒動は大学の大きなリスクになるとして、

第一志望校として絞り込んだ大学について、悪い噂や不祥事など、マイナスの情報を見聞きした場合、志望意欲にどの程度変化があるのだろうか。

第一志望校で悪い噂や不祥事などが起きた場合の志望意欲の変化を尋ねたところ、

「絶対に行かない(志望校から外す)」割合は
【アカデミックハラスメントがあると噂を聞いた】25.9%
【アルコールハラスメントがあると噂を聞いた】12.8%
【大学教授や教員が、不祥事・炎上を起こした】10.9%
【学生が不祥事・炎上を起こした】5.1%

学生が不祥事・炎上を起こした学校を志望校から除外するのは20人に1人の割合と、一見影響が強くないようにも思えるが、「行きたくない気持ちになる」42.0%を合わせると、半数近く(47.1%)は、その学校に対する志望意欲が減退すると回答している。

SNSに悪ふざけや犯罪行為が投稿されて起こった炎上騒動が、昨今世間を騒がせていたが、これらは学生が起こしたものも多かった。

また、こうした炎上騒動は、一旦起きてしまうとインターネット上にいつまでも残り続けるので、受験生が志望大学の情報収集をする際に、目にする機会も多いだろう。炎上騒動や不祥事などによるインターネット上の悪評は、大学の運営や広報において大きなリスクとなり得るだろうことが窺えた。

と結論付けています。

学生の悪ふざけや犯罪行為以外でも、ちょっと挙げるだけでも、名誉教授の暴力団組長からの借金問題、大学教授による入試問題漏えい問題、世紀の大発見から博士号剥奪に至った学位取り消し問題、腹腔鏡を受けた患者の死亡事故が続いた大学等々、不祥事が起こった大学はその評判を傷つけ、の翌年以降の志願者数に影響を与えるでしょう。ネット上でもこれから長い間語られる問題となるでしょう。

そういう意味で、評判は大事だし、維持されなければなりません。

『コーポレート・レピュテーション』を書いたディアマイアー氏が言っているように

本当の課題は、間違いを犯すことではない。人は間違いを犯すものである。しかし、訓練を積み、すぐに間違いを認め、解決するという対応をすることが大切なのである。

最も重要な目標は、間違いの主体であるステークホルダーがその会社をプラスの印象に変えることである。

ステークホルダーが会社についてプラスの印象に持っていないと、10人くらいの関係のない人まで問題が詳細に知れわたり、その結果、悪い印象が蔓延する。うまく管理できないという問題は、傲慢か無知によって起こる。

「小さな問題などはたいしたことではないし、顧客がなんでわれわれを訴えることができるというのか」という傲慢や潜在的リスクヘの無知は効果を台無しにする。

われわれはみな間違いを犯すように、だれも完全な人はいません。「われわれはすべての人を喜ばせることはできないのですが、そのことを数日で忘れてしまいます」

顧客から潜在顧客へと貴社のパフォーマンスの悪さが繰り返し伝えられ、さらに訴えられることは、確かに管理ミスとして警鐘が鳴らされなければならない。

悪いパフォーマンスが及ぼすレピュテーションへの累積的な影響を無視すると、ほとんど確実に、将来の財務業績が伸びなくなってしまう。

評判は維持されなければ将来の財務業績に影響を及ぼすのは間違いない。

ただし、「人は間違いを犯すものである」し、組織は間違いを犯します。

間違っても良いとは言いませんが、間違ったら「訓練を積み、すぐに間違いを認め、解決するという対応をすることが大切」なのであった未来永劫間違いを犯さないようにするのとは違う。

また、消費者、今回のテーマで言えば大学における入学者ですが、彼ら彼女らが「広告」に比重を置いていないのは良き判断だとは言えますが、「知名度」「オーガニック検索」「口コミ」「話題性」で将来にかかわる大学や学部を決めていると、入学しても思っていたのとは違うという不満はこれからますます大きくなって、中退や仮面浪人は20%よりもさらに増えるでしょう。

「知名度」「オーガニック検索」「口コミ」「話題性」よりも、もっと「入学を決める」ために必要な項目があるのではないか。

供給側の組織はこうした消費者側のそれほど努力を必要としない「知名度」「オーガニック検索」「口コミ」「話題性」によって選ばれる道のみを良しとせず、本質的な働く者が良いと思える組織を創造していかないといけないでしょう。

なぜなら「知名度」も「口コミ」も「話題性」も一過性のものであって、組織の継続を保証するものではないのだから。

不信の連鎖が拡大するメカニズム


大手不動産5社の中間決算を見ると、住友不動産以外の4社は売上計上戸数が減少傾向になるようです。

ただし現在進行中の横浜市のマンションに端を発した旭化成建材のくい打ちデータ偽装問題が拡大の様相を呈する中で、これらの影響は今回の中間決算には組み込まれてはいないようです。

都心部の高価格物件は、売り出し日に即日完売といった状態が続く中で、今後これらがどう影響してくるか。

密かにささやかれている都市圏のタワーマンションの暴落の危機話等も含めて、今後目が離せません。

不信や疑惑の目はマンションだけじゃない。

読売ジャイアンツは、野球賭博に関与した3選手に契約解除を通達、3選手には無期限失格処分を言い渡し、社長と会長は期限を設けず当面の間、取締役報酬を50%減俸、渡辺恒雄最高顧問、白石興二郎オーナーは、2カ月間の取締

役報酬を自主的に全額返上とすると発表しました。

3選手はそれぞれ「軽はずみに始めてしまった。その後もどうしてもやめられなかった。自分の甘さを後悔している」「いろんな人の人生をむちゃくちゃにしてしまい、償っても償いきれない。この思いは死ぬまで引きずると思います」「多くの方に迷惑を掛け、自分なりに反省しています」と語ったそうですが後の祭り。

この反省の弁を述べる前には相談の上、携帯電話から野球賭博のやりとりのメールを削除、「食事を賭けていただけ」「復元されたメールに金銭の記載があるとしても、それは冗談を言い合っていたもの」などと虚偽の弁解を続けていたことが明らかになるなどしています。

くい打ちデータ偽装は旭化成建材だけなのか、野球賭博は3選手に限られるのか。それ以外にもあるのではないか。疑心暗鬼の目で消費者に見られているのが現状です。

疑惑の連鎖の理由を考える



実際すでにテレビ等で「あんなの普通ですよ」と話している人も出てきています。


2015/10/23「杭打ちのデータ偽装は日常茶飯」
旭化成建材の元現場代理人が仰天暴露

現場代理人「データの改ざん、転用なんて、ものすごく普通にあることですよ。現場仕事ですので、データの取り忘れとか雨風で汚れるのはよくあること。不正という意味合いを抜きに、『書類をまとめてナンボ』というところがありますから、データの作りようがないときは転用するしかないんです」

Q.「データが取れない」と報告するとどうなるんですか?

現場代理人「まず怒られて、どうしようかを考えて、『データをなんとかしろ』という大人的な言い方で、データを作れと言われる。杭工事というのは現場で一番最初にやる工事で、ここの工期が延びると全部に影響してしまうです。なので、非常に厳しく言われます」

Q.今回、マンションが傾いたことについてはどう思いますか。

現場代理人「傾くこともあるんだなという印象ですね。こういう不正があることは知ってましたが、それでも傾かないものだと思っていました」


さりげなく、しかし爆弾発言。それも1発の爆弾ではなく、全国津々浦々の建物に対して疑惑の目を向けさせる絨毯爆撃になっていることを証言している人が自覚していないらしいところが恐怖です。

加えて、旭化成は子会社の旭化成建材(東京)が過去約10年間に行ったくい打ち工事3040件の調査について、元請けの建設会社との確認・照合作業が難航し、予定していた進捗状況の公表を取りやめると発表しました。

短日時で簡単には調べもつかないってことなのでしょう。また急いで「大丈夫」と公表して、後でひっくり返る危険性があるよりも慎重さを選んだということでしょう。

一方のプロ野球は、日本野球機構(NPB)の熊崎勝彦コミッショナーが3選手の処分は発表、熊崎コミッショナーから調査を委嘱された調査委員会が最終報告書を提出したものの、「重要な関係者から十分な聴取の協力が得られず、携帯電話の提出も受けられなかった。そのため組織的全体像までを明らかにできているものではない」と全容解明には至らなかったとしています。

調査委員会の一人は「(我々には)何の強制力もない。聴取に応じてくれなければ話は聞けない」とも述べたとか。

記者会見ではコミッショナーは以下のようなやり取りがあったようです。


スポーツ報知 11月11日

Q.今後、巨人以外の11球団への調査の予定は?

「今の段階で何か特別なことをするということはない」

Q.調査の中で、反社会的勢力の存在をうかがわせる状況、名称などが出てきた経緯はあったのか?

「『確実な証拠は得られない』というあたりから理解していただきたい」

Q.去年、巨人が笠原のバカラ賭博を把握した段階でNPBへの報告義務はなかったのか?

「その時点で、笠原選手が付き合っている人の中に野球賭博常習者がいると分かってなければ、告発や通報のしようがない」


これを聞いて、多くの人は「やっている奴がまだいるだろう」と普通は思う。しかし、逆に「長いこと引っ張らずにどこかで早めに幕を引くべきだ」という圧力もあちこちであると推測されます。

たしかに捜査権もなく強制力もない組織が全容解明をするのは難しいのでしょう。いつまで調査すれば気が済むのかと言われれば答えもないですが、火がくすぶっているのに消化しましたと言っている感は消費者に疑念を残す。組織は存続する意思がある限り、その歴史に背を向けて生きることはできません。

1985年8月に墜落し死者520名を出した日本航空123便の事故では墜落現場である「御巣鷹の尾根」には事故の翌年、慰霊碑が建立され、毎年慰霊登山などが行われているのはご存じのとおりです。事故から30年経っても、遺族にとっては癒えない傷を残している。自己原因の解明にも時間を要しました。

事故から15年経過してテレビで放映されたCVR(コックピットボイスレコーダ)では、


日本航空123便墜落事故
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

・・・乗務員の努力が明らかとなり、それまで乗務員に批判的だった多数の乗客遺族らから、感謝や過去に非難・批判した事への謝罪の手紙や声が乗務員の遺族に届けられたという。


2006年4月には羽田空港整備地区に残存機体の一部など、事故に関する資料を展示する日本航空安全啓発センターが開設されました。

航空事故調査報告 (PDF)

終らないんです、組織が存続する限りは。事故や事件の原因を仮に解明できたとしても終わらない。それらをどう後世に伝え、どう生かすのかを考え続けなければならないから。

2005年に起こった地震などに対する安全性の計算を記した構造計算書を偽造していたことを公表したことに始まる一連の耐震偽装問題は、2013年前後をもって裁判が終了しました。

構造計算書偽造問題

当事者の多くの会社はなくなりましたが、業界にはこれらについての問題をどう捉えなおすかという課題は残ったし、それは今も続いています。その続く流れの中で起こったものが今回のくい打ちデータ偽装問題なのではないか。


負の連鎖拡大のメカニズムとその対策



そういう意味では組織で起こった事件や事故は解明しても終わりなしといえますし、解明されなければ新たな火種としてさらなる不祥事を引き起こすと言えるのかもしれません。

また、自社で起こった事件や事故に限らず、業界内で起こった事件や事故は、言葉で言えば「事故解明委員会」なるものを設置し、我がこととして事故や事件の原因の究明やその対策に知恵を絞る必要があるでしょう。

それが業界内でとどまらずに世の中の事件や事象について考えられるならば、なおいいですが、そこまでのコストをかけられる組織はそうはないですが、少なくとも業界内での事件や事故については無関係でも「原因究明委員会」を設置して自社内に取り込む作業が必要でしょう。

くい打ちデータ偽装問題や野球賭博問題はそれが起こった組織にのみに作用するわけではなく、その属する業界に多大な影響を与えるのですから。

そして、よく言われる消費者は「安全」と「安心」を分けて考え判断していることを把握しておくことも重要な要素になるでしょう。

たとえば政府が「安全です」と宣言したとしても、それがすぐに「安心」につながって購入に至るわけではないということですよね。

「安全」と「安心」の間には大きくて深い溝があって、安全だと思うけれど安心して買えないという心情が消費者にはぬぐえない。

ファストフード店に提供されている原材料が怪しげなものであったと映像付きで報道されれば、消費者は離れていきます。原材料を提供していた工場を点検し検査して安全宣言を出しても離れた消費者は帰ってきません。

いくら安全といわれても、決して安心はできないからです。安心できると思えるまで消費者は帰ってこない。

「日本の安心はなぜ、消えたのか」の著者山岸俊男さんはこの本の中で


・・・評判には「追い出し」作用と「呼び込み」作用の二つがあるということです。

マグレブ商人は裏切り者を追い出すために評判を利用したわけですが、ネット社会ではいったん追い出されたとしても別名で再度参入することができます。

そのため、評判の持つ「追い出し」効果は役に立ちません。その代わりにネットのような開かれた社会では、評判の持つもう一つの側面、すなわち「呼び込み」効果が発揮されます。

すなわち、悪い評判を流すことで相手を追い払うのではなく、いい評判を積み重ねていくことで自分のところに人が集まってくるようになるということです。

老舗が人々の信頼を集めるのは、長年にわたり正直な取引を続け、客の期待を裏切らなかったからこそその店は「老舗」になれたのだろうとみんなが考えるからです。

それが「ブランドの信用」というわけですが、ネット社会ではそうしたブランド化が企業のみならず、個人のレベルでも起きているのではないでしょうか。

と述べています。

※マグレブ商人とはヨーロッパ中世の地中海貿易で活躍した商人のこと

山岸さんは仮説として

農村やマグレブ商人のような閉鎖的な社会では「悪評」が制裁的効果を持っていたのに対して、インターネット社会に代表される開放的な信頼社会ではポジティブな情報、すなわち「いい評判」が人々を協力行動へ向かわせているのではないか

と投げかけています。

一定の時間の歴史の中で構築されていく組織や企業の評判は現在では気にされなければならない必須項目になりました。ネット上の悪評にも目を光らせないといけません。

しかし、不幸にも起こってしまった事件や事故を糧に私たちはいい評判を積み重ねていくことで自分のところに人が集まってくるようにしなければならない。

ネットいうオープンな社会の到来により「ブランドの信用」による「呼び込み」が求められている。

自らが事件や事故を起こすということは、誰かを「追い出す」のではなく、自らが市場から「追い出している」ことになるので論外ですが、人を集めるには「いい評判を積み重ねていく」しかない。

いい評判を獲得するための題材は世の中に転がっています。あとはそれを題材と思うか思わないか。

不振な業界であったとしても好調な企業というものは存在するものです。その理由は何か。どうするべきかはもうわかっています。

あとはやるかやらないか。くい打ち偽装も野球賭博も他人事ではありません。

ありがたくない「ブラック企業大賞」の発表

毎年恒例になってきた「ブラック企業大賞」のノミネート企業が発表されました。

ブラック企業大賞
http://blackcorpaward.blogspot.jp/

このありがたくないリストにノミネートされた6社は以下の通りです。

株式会社セブン-イレブン・ジャパン
暁産業株式会社
株式会社フジオフードシステム
株式会社エービーシー・マート
株式会社明光ネットワークジャパン(明光義塾)
株式会社引越社関東

いずれも法令違反の疑い報道や裁判で争っている問題を抱えている企業です。

ブラック企業大賞のサイトによれば、


ブラック企業には幅広い定義と解釈がありますが、「ブラック企業大賞」では次のようにブラック企業を定義し、その上でいくつかの観点から具体的な企業をノミネートしていきます。

ブラック企業とは・・・・

1、労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いている企業

2、パワーハラスメントなどの暴力的強制を常套手段として従業員に強いる体質を持つ企業や法人(学校法人、社会福祉法人、官公庁や公営企業、医療機関なども含む)


としています。

これらを見て皆さんはどんなふうに感じるのでしょうか。「やっぱりな」なのか「そうなのか?」なのか。

明確にしておきたいのは、ブラック企業大賞のサイトにもあるように、「ブラック企業」はいまだ定義が定まっていません。

定まっておらず「幅広い定義と解釈」がある中で、主催者が自らの「定義と解釈」でもって「裁判」するのがブラック企業大賞ってことです。

法令違反や過労死などを起こす企業を擁護するつもりはありません。しかし、自らの「定義と解釈」でもって「裁判」する、そしてそれを記者会見で発表するのは正当なんだろうか?

そうする権利はあるでしょう。自由に発言もでき、法律に反しない限り、なにを言ってもいい。ただノミネートされた側の企業にもそれなりの反論や言い分もあるのではなかろうか。そんなふうにも思います。



労基の関係でニュースになった会社ばかり




すでにここでは紹介したことがありますが、厚生労働省が平成25年に発表している若者の「使い捨て」が疑われる企業等に対して集中的に実施した「過重労働重点監督」の結果に関する資料があります。

若者の「使い捨て」が疑われる企業等への重点監督の実施状況
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000032425.html

これによれば「重点監督を実施した約8割の事業場に法令違反」があったと指摘しています。

少し紹介すると、重点監督の実施事業場:5,111事業場


違反状況:4,189事業場(全体の82.0%)に何らかの労働基準関係法令違反

  • 違法な時間外労働があったもの:2,241事業場(43.8%)

  • 賃金不払残業があったもの:1,221事業場(23.9%)

  • 過重労働による健康障害防止措置が実施されていなかったもの:71事業場(1.4%)


健康障害防止に係る指導状況〔(1)のうち、健康障害防止のため、指導票を交付した事業場〕

  • 過重労働による健康障害防止措置が不十分なもの:1,120事業場(21.9%)

  • 労働時間の把握方法が不適正なもの:1,208事業場(23.6%)


重点監督において把握した実態

  • 重点監督時に把握した、1か月の時間外

  • 休日労働時間が最長の者の実績
    80時間超:1,230事業場(24.1%)うち100時間超:730事業場(14.3%)




つまり相当数の法令違反が全国の数々の事業所であるということですよね。これらの企業はブラック企業大賞にはノミネートはされません。

でも、厚生労働省が指摘している「違反・問題等の主な事例」を見ると、ブラック企業対象にノミネートされている企業とそれほど大差のない事例も見られます。


違反・問題等の主な事例

  • 長時間労働等により精神障害を発症したとする労災請求があった事業場で、その後も、月80時間を超える時間外労働が認められた事例

  • 社員の7割に及ぶ係長職以上の者を管理監督者として取り扱い、割増賃金を支払っていなかった事例

  • 営業成績等により、基本給を減額していた事例

  • 月100時間を超える時間外労働が行われていたにもかかわらず、健康確保措置が講じられていなかった事例

  • 無料電話相談を契機とする監督指導時に、36協定で定めた上限時間を超え、月100時間を超える時間外労働が行われていた事例

  • 労働時間が適正に把握できておらず、また、算入すべき手当を算入せずに割増賃金の単価を低く設定していた事例

  • 賃金が、約1年にわたる長期間支払われていなかったことについて指導したが、是正されない事例




しかし一方はノミネートされて糾弾され、他方は監督署からの是正処置で終わる。

ノミネートされていない企業以外にもいっぱいこうした事例はあるけれど、それらはブラック企業大賞ほど好奇の目では見られない。

ブラック企業大賞を発表することで世間の耳目を浴び、「悪い企業」をさらして血祭りにあげることで、ある種の問題に大衆の目を向けさせる意味はあると思います。

ただそれは誹謗中傷も加わる、もしくは加わる可能性が高くなるってことなのです。批判されるべき事項以外もむやみに非難される。あることないこと言われる。悪いイメージが増幅され拡散して企業にダメージを与えます。

「脱税して100億円追徴されました」因果が明確です。それなら企業も納得できる。

「ブラック企業対象にノミネートされた」ノミネート理由に関する非難をされた。それは因果が明確です。しかし、それ以外のさまざまに加わった事項については余計な「支払い」をさせられることになる。

それらを含めて企業経営であり、それが評判を守るってことであるとはいえるでしょう。としても、そこには釈然としない気持ちが伴うのも事実ではないでしょうか。

異物混入における風評被害と対応策


国民生活センターでは、毎年、消費者問題として社会的注目を集めたものや消費生活相談が多く寄せられたものなどから、その年の「消費者問題に関する10大項目」を選定し、公表しています。

それによると「2014年は、冷凍食品への農薬混入や事業者が保有する個人情報の大量流出など、社会を騒がせた重大な事件が相次ぎ、消費者の不安が高まりました。また、あたかも公的機関等の職員であるかのように思わせる詐欺的勧誘や、遠隔操作によるプロバイダ変更勧誘トラブルの増加が顕著となっています。」とあります。

1年さかのぼってみると「2013年は、全国的にも高齢者の消費者トラブルがさらに増加したほか、ホテル等のメニュー表示や薬用化粧品による白斑トラブルが大きな社会問題となりました。また、トラブルの国際化(海外のインターネット通販によるトラブル等)の傾向も強まってきています」とあります。

世間を賑わした事件がこれを見るとひと目で思い出されますね。

国民センターの「消費者問題に関する10大項目」のうち、2013年の1つに「ホテルや百貨店でのメニュー表示問題が相次ぐ」があり、2014年の1つには「食の安全と信頼が脅かされる事件が相次ぐ 食品の安全性に関する相談がここ5年で最多」とある。

いずれも「食の安全性」につながっているところです。

国民センターによれば、食品の安全・衛生に関する相談は2014年は9,572件と2013年同期に比べ約1.8倍となっているそうです。

メニューや産地の偽装、また異物混入や不衛生について消費者はすごく敏感に反応します。

食品への異物混入 の関連ニュース一覧
http://news.yahoo.co.jp/related_newslist/food_with_suspicious_substance/

子供の頃、「ばっちい」「ばばっちい」なんてよくいわれていました。これは方言なんでしょうか、「汚い」っていう意味だと思いますが、道路で落としたものでも平気で拾って食べようとする幼児が「ばばっちい」といわれて手を引っ込めるなんていう経験をした方も多いでしょう。

特に日本人は「ばばっちい」については敏感で、「ばばっちい」ものを平気で出している、隠して出しているメーカーやお店は糾弾の的になりやすい。

その感覚は、昔に比べて「潔癖症」の方が増えたことを見ても、より鋭くなってきているのではないでしょうかね。SNSの社会的な拡散はその後押しをしているように見えますし、正義か悪かで言えば「ばばっちい」は「悪」と共感されやすい土壌がある点も見逃せません。

少し前ですが、食中毒が多い季節にテレビで焼肉を焼く際に、トングを使わず箸で生肉をつまんで焼いたり、ひっくり返したりするのは危険であるとやっていました。食中毒の危険が高まるというわけです。

そうしたテレビ等の影響もあってか、私の周りでも、昔はそれほど気にしなかったはずなのに、焼肉ではトングを使用する方が多くなっている気がします。それはいいとして、その気を遣っている方が、そのトングを使って焼き終えたお肉を自分の皿に焼いた焼肉をのせている。

それって正しい使い方なんでしょうか? だって「そのトングは最初に生肉をつまんだトングですから!」と思うのは私だけ?

生肉をトングでつまんで焼き台にのせる、ひっくり返すまでがトングの役割で、焼けたお肉は箸でつまんで取ってこなきゃならないのではないのか?

いまだに謎なのですが、そうした細かい点はそれほど気にはされないけれど、目に見える「ばばっちい」は糾弾される、そこが「食の安全性」のおもしろいといっちゃ、あれですけれど、微妙で奥が深いところでしょう。



チロルチョコを例に学ぶ対応策



先の焼肉のトングの話もそうですが、何年か前にチロルチョコ芋虫事件というのがありました。

ツイッターで、ある方が写真とともに「チロルチョコの中に芋虫いた。どーゆーこと?ありえない。もう絶対食べない。」ってツイートしたことが発端で、その衝撃的な写真もあって、1万件以上のリツイートを集めるほどに拡散。

「チロルチョコの中に芋虫が!」写真つきツイートにチロルチョコが冷静な対応
http://getnews.jp/archives/358726

このツイートによって「チロルチョコ、許さん!」という激しい反応が当初示されましたが、途中から「本当にチロルチョコに芋虫が混入してしまうなんてことがあるんだろうか」という冷静な消費者も現れました。

考えてみれば確かにそうで、チョコレートの詳しい作り方は知りませんが、製造の工程で原料をミキシングして、ある一定の温度で保ちつつ、型に流し込んで冷却する、くらいは想像できます。

もし製造過程で芋虫が混入したとすれば、ミキシングの過程で芋虫は粉砕され、跡形もなくなって練り込まれて「芋虫味のチョコレート」はできるけれど、できあがった製品に芋虫がその形のままいるなんてことはありえない。

この事件ではチロルチョコ側の冷静な対応が賞賛されましたが、実はすばらしい「神対応」の前に、ある種の常識で消費者側が「チロルチョコの中に芋虫がいることはない」と大勢が判断したことが大きな問題につながらなかった要因でしょう。

また、チロルチョコ側も写真を見て、製品に「30日~40日以内の状態の幼虫」が入っていることは「絶対にない」と即断したと思われます。

加えて写真の商品の最終出荷が約半年前だったこともあって、製品出荷後のどこかの時点で芋虫が入り込み、チョコレートを食べながら密かに成長していたことも明らかになった。

それら事実ではあっても、慎重に気を遣いながら、チロルチョコ側は情報発信したことがうかがえます。

賞賛と炎上を分けるもの
http://japan.cnet.com/marketers/sp_orgtransparency/35034620/

間違っているのが消費者側であるとはわかっていても、慎重な、誰かを非難するような口調にならずに冷静に対応する。結果としては間違った情報をアップした消費者側が糾弾される形で決着がつきました。



炎上対策のポイント



今回取り上げた「チロルチョコ芋虫事件」は写真の判断で明確な事実を公表することができましたが、そうでない製品や商品もあります。

たとえば、先月、「ケーキやパンに髪の毛が入っていた」などと電話でうそのクレームをつけ、現金や商品をだまし取ったとして逮捕された兵庫県の女性がいました。

このクレーマーは5か月間の間に、ケーキ店やパン店など30都道府県の約1200店に約7千回の電話をかけた記録があったとかの確信犯ですが、警察によれば「自宅には現金書留の空袋もあり、お金を直接持って来られない遠方の店からは送らせていたとみられる」そうです。

そう、「ケーキやパンに髪の毛が入っていた」は常に気をつけていても可能性があり、入っていれば「ばばっちい」と即断される代物ですよね。

この手の問題は完璧に対応しても「0」にはならない問題でしょう。

そう考えると、やはり初期対応はいかに処置するか。これにつきます。

そのためには、自社の製品にいかなるものであれ、不備や混入の可能性があるのかないのかをまず明確にしておかないといけないでしょう。

チロルチョコ芋虫事件では、初期対応でチロルチョコ側からチョコレートに関する「よくある質問」のリンクが提示されました。

チョコレート・ココア大辞典 よくある質問
http://www.chocolate-cocoa.com/dictionary/word/faq.html

ここにはチョコレートに関する「よくある質問」ならぬ「よくあるクレーム」に対する答えがあるわけですよね。

それら想定される問題は最初に明らかにし、あらかじめ公表しておくというのはすぐにできる対処になるでしょう。「ばばっちい」と感じる感覚のものについては、なくてはならないともいえるでしょう。

それはクレーム対応についてもあらかじめ対処を決めておくことにもつながるでしょう。

「ケーキやパンに髪の毛が入っていた」ら、代金をお返ししたうえで、新しい商品を進呈する。それをあらかじめ公表しておくわけです。

「ケーキやパンに髪の毛が入っていたら・・・」なんてはなから公表もしたくもないでしょうが、そうであれば「過去5年間そうしたクレームは起こっていません」と明記したらいい。

目の前で起こったものや提示されたものの慎重な対処とともに事前に準備して公表できるものは公表しておくことがチロルチョコ芋虫事件では功を奏したといえるのではないでしょうか。

間違いはどこでも誰でも起こり得ます。これまで2度以上起こったものについてはその組織の対処方法をあらかじめ明記してみる、難しいでしょうがぜひ一度検討してみてください。

すでに成功事例はあるのですから。

ワタミが「ブラックとは全然思っていない」の結果


30年で街の居酒屋から上場企業まで登りつめた立志伝中の企業のワタミの周囲が慌ただしい。

ワタミは10月2日、外食事業などを手掛ける全額出資子会社のワタミフードシステムズを12月1日付で吸収合併すると発表、介護子会社の売却によってグループの主力事業が食品関連事業に集中することから、組織統合で経営効率化を目指すとしています。

ワタミが「ブラック企業」という烙印をおされて以降、2014年3月期に上場以来初めて49億円の最終赤字を計上、翌2015年3月期にはさらに赤字が拡大した129億円を計上、経営悪化の声は日増しに高まったいる中、ワタミはついに介護事業の売却を決断しました。

売却額は210億円で、来年2016年3月期に約130億円の売却益を計上する見通しで、これにより連結最終損益は140億円程度の黒字と3期ぶりに黒字に転換となります。

総資産の6割強を占める介護事業を切り離し、自己資本比率を上げ、巻き返しを図るワタミ。

しかし、主力の国内外食事業の既存店売上高は4~8月も前年比で約1割減で、今期の売上高は前期比1割減の1300億円前後と予想されています。

ワタミの業績不振は「ブラック批判」だけではなく、時代の流れで居酒屋が「古く」なったという要因もあるでしょう。さまざまな要因があったにせよ、やはりワタミにとって「ブラック批判」は大きな影響を与えたと言わざるを得ません。

そのあたりを今回は考えてみましょう。


「ワタミのブラック報道」をどう受け止める?




「ワタミ」のキーワードでニュース検索をすると、介護事業の売却や吸収合併の記事以外で、最近の記事で出てくるのは例えば以下のような記事です。

ワタミ、債務超過寸前の経営危機 キャッシュ流出、多額負債...自己資本での再建困難
http://biz-journal.jp/2015/10/post_11978.html

恐らくワタミの復活は「ない」と考えられる理由 「外食業界の星」はなぜ没落したのか?
http://biz-journal.jp/2015/10/post_11891.html

「ワタミ型」キングオブ社畜の特徴 脱落した人間を陰で軟弱モノ呼ばわり
http://news.livedoor.com/article/detail/10722932/

「もうダメだよね」といわんばかりの記事のオンパレード。

「ブラック批判」から業績不振、そして今現在とここ数年の出来事はまっしぐらの様相で、挙句の果てが上記のような記事となれば目も当てられません。

このメルマガでは2013年8月にワタミの「ブラック企業批判」について取り上げました。

あれから2年とちょっと。2年前のメルマガを振り返ってみましょう。

2013年8月のメルマガで私はダニエル・ディアマイアー著「評判はマネジメントせよ」の中から


一般市民が信頼に基づく規範の枠組みで捉えている問題を、企業人は純粋な経済的な取引として概念化している場合があり、その齟齬が道徳的憤りと処罰願望の引き金となるおそれがある。


を引用して、当時のワタミに対する論争について考察しました。

当時はワタミの創業者である渡辺美樹氏が参議院の自民党比例区で出馬して当選、この参議院選挙で共産党の新人で共産党としては12年ぶりに東京選挙区で議席を獲得した吉良佳子氏が渡辺氏を激烈に攻撃しました。吉良氏は、名前をもじって「ワタミキラー」とも呼ばれるくらいの勢いでした。

このときのお二人の主張というのが対象的で、少しだけ紹介すると渡辺氏は



  • ブラック企業が納税する税金はブラックマネーか?

  • その会社を信じて1万人以上の人が頑張って働いてるのよ。失礼にも程があるだろう?

  • 共産党は納税者をブラック呼ばわりするのか?

  • 直接納税だけで年間30億以上も納税してる会社をブラック呼ばわりするって。政治って票を集めたらそれだけで良いのか?




と言い、

「ワタミキラー」の吉良氏は、


ワタミをブラック企業といったら、とある経営者の方から、「何がブラックなの?」「外野からブラックなんて言われる筋合いは全くない」と批判をいただいきました。

しかし、過労死する人をだしながら、なお労働基準法違反が常態化している企業は外部からも正さなければ、従業員が救われません。


と主張する。

2年前にも書きましたが、この両者の発言はどちらの主張がより正しいかは置いておいて、

「一般市民」VS.「企業人」

「信頼に基づく規範の枠組み」VS.「純粋な経済的な取引」

の視点で見たほうが両者の主張がピンとくるはずだと指摘しました。


一般市民が信頼に基づく規範の枠組みで捉えている問題を、企業人は純粋な経済的な取引として概念化している場合があり、その齟齬が道徳的憤りと処罰願望の引き金となるおそれがある。


このディアマイアー氏の言葉は現在問題になっている横浜市の傾いたマンション問題などにも関連してきます。

「ブランドを信用して買ったのに。とても不安なので早く建て替えてほしい」というのが住民の率直な意見だと推測しますが、三井不動産グループの説明会での対応を見ていると、「一般市民が信頼に基づく規範の枠組みで捉えている問題を、企業人は純粋な経済的な取引として概念化している」と見ないわけにはいきません。

そして「その齟齬が道徳的憤りと処罰願望の引き金となる」可能性を大いに秘めている。

ワタミの業績不振は時代の波をつかみきれなかった要因があるにせよ、庶民の「道徳的憤りと処罰願望」がワタミの業績に数年たって大きな影響を及ぼしたといえるのではないでしょうか。

先の横浜の傾いたマンション問題では、現時点では販売元の三井不動産グループから建物を支えるくいの工事を請け負い、データの偽装を行った旭化成建材、およびその親会社である旭化成へと重点が移っているように見えますが、もしマンションを販売した三井不動産グループが「被害者面」をしていると、のちに住民および庶民からの「道徳的憤りと処罰願望」を誘発するでしょう。



「一般市民」VS.「企業人」




21世紀は・・・などというとあまり流行りませんが、それでもあえて使うなら21世紀はもはや「論争の時代ではない」と私は考えています。

「朝まで生テレビ」的な大きな声を出したもの勝ちという要素がある論争といえないエンターテイメントも含めて、もはや論争は企業にとって益はない。

それは情報発信やプレスリリースに意味がないということではありません。同じ土俵に乗ってワイワイガヤガヤ話し合ったり、言い合ったりする意味がないということです。

横浜の傾いたマンションであれば、直ちに建て替えの決定、およびその間の保証の約束であって、住民説明会ではない。

施工業者の偽装だと被害者面をしても、「一般市民が信頼に基づく規範の枠組みで捉えている問題」にいかなる反論も通用しないでしょう。

建て替えやその間の保証を1年かけて話し合って最終的に決めるくらいなら、即座に決定したほうがいい。

それは数年前のワタミのブラック批判から始まる評判の低下、不信、業績悪化をみればわかるでしょう。

企業経営においても、誹謗中傷や風評被害の対策において、

「一般市民」VS「企業人」
「信頼に基づく規範の枠組み」VS「純粋な経済的な取引」

この枠組みを知らなければ、対策としての打ち手は全部裏目に出てしまいます。

仮に論争に勝ったと仮定して、企業は、その企業の評判は守られるのか。その業績は維持、発展できるのか。

企業が論争に勝って、評判を落とすとするなら、営利企業にとってこれほど虚しいことはないのではないでしょうか。

クレームもミスも、いわれのない誹謗中傷も、思いもしない風評被害についても、こうした「一般市民」VS「企業人」そして「信頼に基づく規範の枠組み」VS「純粋な経済的な取引」を頭に入れて対処する必要があります。

この枠組みを無視していかに主張し、論争を続けても営利企業にとっての勝利はない。そのことを最近のワタミの業績は示していると思いますし、横浜のマンション問題では初動の対処を誤りつつあると思います。

私たちは「一般市民が信頼に基づく規範の枠組みで捉えている問題」を自分たちの論理で見ても、論じても、裁いてもならない。

なぜなら、それは「道徳的憤りと処罰願望の引き金となるおそれがある」から。

他人の失敗を学ぶことで、自分の失敗を回避できるのです。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶのですから。
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