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お知らせ

コーポレート・レピュテーション その47

アギーレ前日本代表監督の契約解除に至る騒動について、日本サッカー協会は大仁邦弥会長やアギーレ前監督の招請に尽力した原博実専務理事と霜田正浩技術委員長を処分しないことを決めたと報道されました。

この判断を皆さんはどう感じましたでしょうか?

なんだかスッキリしないように思うのは、昨年のワールドカップ(W杯)ブラジル大会での1次リーグ敗退、U21(21歳以下)、U19、U16の各代表が各アジア選手権で8強止まり、A代表も今年1月のアジアカップで5大会ぶりの8強・・・どうしても、これらの結果のイメージが強いからでしょうか。

もし代表チームの結果が出ていればどうでしょう。

前回ここで書いた

「営利企業にとって財務業績を向上させることが最も大切である」これは評判を考える際にも常に念頭に置いておくべきことでしょう。

財務業績が向上するとは組織が提供する商品やサービスが顧客から支持されているということであり、この支持の延長線上に評判がある。

がサッカー協会にも当てはまるのではないかと思います。

良い成績を残すことはこの「営利企業の財務業績を向上させる」に該当します。

成績が向上すると組織が顧客から支持され、この支持の延長線上に評判があると考えると、サッカー協会への批判は業績、成績への不満と見ることもできるでしょう。

現在は結果への不満が蓄積されている状態ですから、6月からの2018FIFAワールドカップ1次予選以降、成績が不振だと、今回不問に付したアギーレ監督の任命責任も含めて、

あのときちゃんと任命責任問題を明確にしていなかったからだ!そもそも2014ワールドカップブラジル大会の惨敗の総括をきちんと行っていなかったことが問題だ!

など過去をさかのぼっての批判も出てくるでしょう。「業績が悪ければ」きっと。

逆に、業績=成績が飛躍的によければ、任命責任問題もブラジル大会惨敗も「失敗を糧にした」という良い材料になることでしょう。

さて今後どうなってゆくのでしょうか…..

コーポレート・レピュテーション その47

櫻井通晴著『レピュテーション・マネジメント内部統制・管理会計・監査による評判管理』
第6章「内部統制とコーポレート・レピュテーション」より紹介します。

2001年11月、アメリカのエネルギー会社エンロン社が連邦破産法チャプターイレブンを申請に端を発してアメリカでSOX法が成立、2004年には西武鉄道による持ち株比率の過少記載による上場廃止で、日本でも2006年6月に金融商品取引法が成立し、新たな内部統制のルールとして「J-SOX(日本版SOX法)」 が実施、すべての上場企業に適用されることになったことは前回すでに触れました。

また、これら「内部統制がもたらした五つの深刻な問題」として加護野忠男氏が挙げた

1、導入に大変大きなコストがかかる2、日本の場合、このような制度は不要である3、企業の内部に官僚主義を蔓延させる4、日本企業の独自の強みが失われてしまう5、内部統制システムが組織の風土を劣化させてしまう

についても前回列挙した通りです。

内部統制がもたらした五つの深刻な問題 加護野忠男
bizgate.nikkei.co.jp/article/72674312.html

そして、ちょうど今問題になっている農協の改革問題。

先日、農協グループの頂点に立つ全国農業協同組合中央会(JA全中)が、政府・自民党のまとめた農協改革案を受け入れると表明しました。

農協改革を巡っては、政府・自民党がJA全中から地域の農協に対する会計監査の権限を撤廃することやJA全中を農協法に基づかない一般社団法人にすることなどを盛り込んだ改革案をJA側に提示して、協議を続けていました。

特に今回の農協改革では「会計監査の権限」について議論されましたのでこの話題を取り上げる次第です。

まずは農協ってどんなところ? ここからですね。

農協改革って何をするの?そもそも農協ってどんな組織?
headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140523-00000024-wordleaf-bus_all

農業協同組合(JA)は、農業従事者や農業を営む法人によって組織された協同組合です。

全国各地にある農協を取りまとめる中央組織として、全国農業協同組合中央会(JA全中)が存在しており、グループ全体の方向性の決定や指導などを行っています。

また農産物の集荷や販売を一手に担う全国農業協同組合連合会(JA全農)や生命保険や損害保険のサービスを提供する全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)などの組織もあります。

農協はもともと農業従事者のために設立された組織ですが、今では1万人以上の従業員を抱える巨大組織に膨れあがっています。

全農はある意味で、日本で最大級の農業関連商社と言い換えることができますし、JA共済連は大規模な生損保会社ということになります。政治的な活動を行うJA全中は、いわばJAグループのためだけに存在する経団連とでもいうべき存在です。

少しまとめておくと

指導事業を行う◆JA全中(全国農業協同組合中央会)◆
全国各地にある農協を取りまとめる中央組織、グループ全体の方向性の決定や指導

経済事業を行う◆JA全農(全国農業協同組合連合会)◆
農産物の集荷や販売を一手に担う

◆JA共済連(全国共済農業協同組合連合会)◆
生命保険や損害保険のサービスを提供

これ以外に信用事業としての「農林中金」、厚生事業の「JA全厚連」で構成されているんですね。

農林水産省の図がわかりやすいですね。
www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h19_h/trend/1/t1_2_2_04.html

これまではJA全中が指導によって全国一律の活動を行ってきた。しかし、政府自民党は全中の指導による全国一律の活動を行う体制をあらためなさいと。

各農協が独立して地域の実情に合ったサービスを提供しなさいと今回提言したわけです。自民党の大きくて有力な支持基盤のひとつに切り込んでいったんですね。

なぜこうした流れが出てきたのか?

農協があるから農政改革ができない
www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/yamashita/61.html

EUは1993年に大農政改革を行い、穀物の支持価格を29%引き下げ、財政による直接支払いで農家所得を補償するという政策に転換した。

これによってEUの小麦価格はアメリカのシカゴ相場をも下回るようになり、EU産穀物の国際競争力は飛躍的に増加した。

その後も、これまで政治的に手のつけられなかった砂糖、乳製品など主要な農産物について、価格支持から直接支払いへという改革を着実に実施している。

EUは加盟国が27カ国にものぼり、合意形成は相当困難であると思われるのにもかかわらず、なぜEUでは農政改革が進み、日本では進まないのだろうか。

それはEUになくて日本にあるものがあるからである。

それはJA農協(以下単に農協という)という存在である。

農協にとっては米価が高いとコメの販売手数料収入が高くなるうえ、農家に肥料、農薬や農業機械を高く売れる。

つまり、農協の収益が高い価格維持とリンクしているのである。

このように価格に固執する圧力団体はEUには存在しない。

戦後農政は、米価を求心力として結合した、自民党農林族、農協=コメ兼業農家、農林水産省から成る「農政トライアングル」によって行われてきたといってよい。

農政改革をするためにも巨大組織で圧力団体でもある農協を改革せよ!というわけです。

これはTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)における経済の自由化を目的とした多角的な経済連携協定 の影響もあるでしょうし、農協側もそれを飲まざるを得ない時代の流れでもあったということでしょう。

<農協改革> JA全中は何が「特別な組織」なのか?
headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150203-00000009-wordleaf-pol

今回の合意は改革の始まりであって、今後は農協の解体、弱体化する方向にドンドン向かっていくことでしょう。

まずは約700ある地域農協を束ねるJA全中の中央会制度が廃止され、地域農協を指導する権限がなくなる。

各地の農協から農産物を集めて販売する全国農業協同組合連合会(JA全農)については株式会社になり、加えてJAの信用・共済事業の分離される。つまり農協の解体ですよね。

そして大きな焦点になっているのがこのメルマガの今のテーマでもあるJA全中が地域の農協に対して行っている会計監査(中央会監査)の権限の撤廃です。

政府は、会見監査(中央会監査)の権限の撤廃は競争力を向上させるためだとして、JA全中から地域の農協に対する監査の権限を切り離し、新たに設立される監査法人に移行させるとしています。

中央会監査とは、

毎日新聞によれば、
mainichi.jp/select/news/20150205k0000m010107000c.html

専門の国家資格を持つ「農協監査士」を中心に、財務状況などを点検する会計監査と、日常業務が正しく行われているかどうかをチェックする業務監査がある。問題点があれば、農協に改善を指導する。

監査と指導を一体的に担うことでJA全中が強大な権限を行使し、地域農協の自主的な経営を阻害しているとの批判がある。

逆に、JAグループ内での監査のため、外部の公認会計士監査に比べチェックが甘くなる可能性も指摘されている。

つまり中央会監査とは「内部統制」のことである意味ではすでに農協では内部統制を行っていたともいえます。

内部統制がなくなれば、どうなるか。農協は反発します。

「独自の強みが失われてしまう」「組織の風土を劣化させてしまう」などが理由として挙がっているようです。

ただ世の中の流れが変わってきている。

日本において、平成2年(1990年)から平成19年(2007年)にかけて、農業就業者の数は3割減少しました。平均年齢は17年間で7.9歳上がり64.6歳。専業農家は22%、兼業所得の比重の多い第2種兼業農家は61%。

自民党が強気の理由もここであるでしょう。

「日本の農業はここまで衰退している!」
www.tkfd.or.jp/research/project/sub1.php?id=165

内部統制をそのまま実行させたとしても、農業自体がこのままでは衰退してしまう。どちらが正しいというよりはどっちを取るかの選択肢の問題ともいえるのかもしれませんね。

専門家の中には農協の中央会監査を評価する声もあります。

[農協改革 物申す 上] 監査廃止 成長力そぐ 青山学院大学大学院教授 八田進二氏
www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31737

農協改革で監査制度が焦点となっているが、監査論の専門家が不在のまま議論が進んでいる。

JA全中の監査は「JAの自由な経営を阻害している」と言われているが、理解できない。

強制力をもって自由な経営を縛る。監査に対して、そういった後ろ向きな発想しかないから、議論の方向性が見えなくなっているのではないか。

規律がなく野放しな状態では、健全な経営は期待できない。組織には自主性と規律性の両方が求められ、規律を保つものが監査だ。

第三者が監査によって事業内容が公正だと検証するからこそ、利害関係者は納得する。そして、その背景では不正や不祥事が排除され、経営者も胸を張って活動できる。そういう前向きな検証が、監査だ。

内部監査についてのもっとも核心的な部分の話です。

監査と聞くとどうしても日本人は「後ろ向きな発想」をしてしまいがちです。

1、導入に大変大きなコストがかかる
2、日本の場合、このような制度は不要である
3、企業の内部に官僚主義を蔓延させる
4、日本企業の独自の強みが失われてしまう
5、内部統制システムが組織の風土を劣化させてしまう

広く信じられている「日本人性善説」も影響があるのかもしれない。

しかし、もはや会計監査だけでは組織の健全性を証明できない時代に入っています。

青山学院大学大学院教授八田進二氏は続けてこうも言っています。
www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=31737

21世紀に入り、米国でのエンロン事件に始まる大企業の粉飾決算が問題になり、監査には不正の摘発が強く求められるようになった。

そのため、単に財務諸表の正しさを証明する会計監査だけでなく、指導性を発揮して業務の健全性を確保するとともに不正を防ぐ、業務監査的な機能を監査に求めるようになってきた。

現状の公認会計士の監査は会計監査だけだが、専門家の間では、会計だけでなく業務全般を対象とする「統合監査」の研究も進んでいる。

公認会計士の監査制度も、社会の期待に応じて不断に議論がなされている。翻って全中監査を見ると、指導機能を発揮し、会計と業務の監査を一体的に行っている。この仕組みは、評価に値する。

上場企業と同じようにJAも公認会計士の監査にしようという議論は、確かに分かりやすい。

しかし、本当にそれで良いのか。

会計監査だけで組織のガバナンスは保てるのか、そのための専門家がJAの内部に確保できているのか、そういった問題が全てクリアできるのだろうか。取り返しのつかない損失を受ける可能性がある。

JAの中央会監査の理念、考え方は最近の上場企業に課せられている内部統制の理念とも合致している。

もし、その内部統制がなくなれば農協という組織は間違った方向に進んでいく可能性があるのではないか。まさにその通りです。

しかし、もし農協という組織が必要のない組織、衰退する農業を促進させる存在であると仮定すれば、中央会監査どころかその組織自体が解体されなければならない。

そういう意味で会計と業務の監査を一体的に行っている「中央会監査」の意義と農協の存在意義は分けて議論されていかなければならない問題です。

そこを間違うと、現在の組織に課せられている会計と業務の一体的な監査自体に疑問符がつくことになる。

しかし、組織に課せられている会計と業務の一体的な監査は世界的にも問題になった課題についての現段階での1つの答えでした。今から前の時代に変えるわけにはいきません。

会計と業務の一体的な監査を通じてどう企業や組織の業績をアップにつなげられるか。もうそこを考えないといけないのではないでしょうか。

皆さんからの率直なご意見をお待ちしております。

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