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お知らせ

仮処分命令申立書/コーポレート・レピュテーション その28

広島では土砂災害が大変なことになっているようです。

日に日に増える行方不明者の数は誰がいなくなっているかの把握がなかなかされえないということなんでしょう。

15年ほど前にも同じような土砂災害があったとのことで、これだけゲリラ豪雨が増え、天候不順が続くと、我が身のこととして考えざるを得ませんね。

短時間の雨の推移などでしたら、最近公開された最新の高解像度降水ナウキャストなども利用したらいいですね。

気象庁 高解像度降水ナウキャスト
www.jma.go.jp/jp/highresorad/

コーポレート・レピュテーション その28

現在は畑中鐵丸法律事務所著『企業のネットトラブル対策バイブル』を取り上げています。今回が11回目。

※『企業のネットトラブル対策バイブル』は書名が長いのでここからは『ネットトラブル対策』とさせていただきます。

前回から第4章『有事対応における課題』を紹介しています。

前回すでに第4章『有事対応における課題』より刑事手続と民事手続の差異についての記述は紹介しました。

コーポレート・レピュテーション その27

犯人の顔写真公開の意味/コーポレート・レピュテーション その27

刑法と民法と名誉棄損と侮辱について

刑法と民法と名誉棄損と侮辱について/コーポレート・レピュテーション その19

今回は「実例にみる法的手続きに要する時間とコスト」です。

◆「ラーメンチェーン店」ネットトラブル事件

平成14年10月頃、「ラーメン屋チェーンを展開しているG社は、新興宗教団体の一つであるH及びその関係者と密接な関係がある」旨の投稿が、とあるウェブサイトに掲載され、その後も、当該ラーメン屋チェーンとHとの関係を摘示する内容の投稿が続いた・・刑事手続の場合、捜査機関や検察官が、主体的にほぼ全ての手続を遂行することになりますので、被害者となった一般人や企業などが、刑事手続に関与したり、何らかの中立てを行うことはほとんどありません。・・

【実施した法的手続】
1、民事手続:損害賠償請求訴訟
2、刑事手続:刑事告訴

【結果】
1、民事手続:金77万円(請求額:3150万円)
2、刑事手続き:金30万円の罰金刑

【解決までに要した時間】
1、民事手続:損害賠償請求訴訟の提起(平成15年2月)から東京高裁判決(平成17年5月)に至るまで約2年3カ月
2、刑事手続:刑事告訴(平成15年2月)から最高裁判決(平成22年3月)にて刑が確定するまで約7年1カ月

◆某家庭用ゲームソフト開発会社誹講中傷事件

1、平成21年3月ころ、A掲示板に、家庭用ゲームソフト開発会社Xの商品を誹謗中傷する投稿がなされる
2、これに対し、X社は、A掲示板のルールに従い、削除依頼を行ったり、弁護士を通じて、A掲示板を管理するYに対し削除依頼を行ったが、該当投稿は削除されなかった。
3、そこで、A掲示板を管理するYに対し、発信者情報開示及び投稿の削除の仮処分を申立てた。

【実施した裁判外の手続】
1、掲示板のルールに則った削除依頼
2、弁護士を通じた削除依頼

【実施した法的手続】
1、民事手続: 発信者情報開示及び投稿の削除の仮処分命令の申立( 仮処分命令に基づく仮執行(間接強制) )

【結果】
1、民事手続:当該投稿の削除
2、民事手続:発信者情報(IPアドレス)の開示

【解決までに要した時間】
1、民事手続:仮処分申立(平成21年5月)から任意の削除(平成21年6月) に至るまで約1ヶ月
2、民事手続:仮処分申立(平成21年5月)から任意の発信者情報(IPアドレス)開示( 平成21年7月)まで約2ヶ月

「ラーメンチェーン店」と「某家庭用ゲームソフト開発会社誹謗中傷事件」の大きな違いは、「ネット攻撃」に対応するために選択した法的手続と、一定の結果を得られるまでに要した時間にあります。

すなわち、前者は、民事手続として損害賠償請求訴訟を、刑事手続として刑事告訴を選択し、民事的結果を得られるまで約2年3ヶ月、刑事的結果を得られるまで約7年1ヶ月を要し、

後者は、民事手続として発行者情報開示及び投稿の削除の仮処分命令の申立のみを選択し、民事的結果を得られるまで約2ヶ月を要しています。

上記違いの大きな理由は、選択した法的手続の性質によるものと考えることができます。・・・結局、どの法的手続を選択するかは、専門家の意見を聞き、それに要する費用と時間を十分に理解した上で、自分が求める被害の回復をいかに図るか、という点に尽きると考えることができます。

民事手続にしろ、刑事手続にしろ、それぞれ双方の主張に耳を傾けて慎重に手続きを踏んで行うので長い年月を要します。

それゆえその手続きに踏み切るには時間とコストをかける気持ちが必要となります。

その時間とコストをかけても良いとするものだけが踏み切ることができるものともいえます。

一方で、最近は仮処分の手続きというものも多く出てきているようです。

今週のテーマで取り扱います。

 ★ 今週のテーマ 「仮処分命令申立書」

こんなニュースが飛び込んできました。

フェイスブックに開示命令 飲食店中傷書き込みの発信者情報
2014/8/18 日本経済新聞

会員制交流サイト(SNS)のフェイスブックに匿名で店を中傷する書き込みをされた関東地方の飲食店経営者が、米フェイスブック社側に発信者の情報開示を求めた仮処分申し立てで、東京地裁(鈴木雄輔裁判官)がIPアドレスなどの開示を命じる決定をしていたことが18日、飲食店側への取材で分かった。

決定は12日付。SNS側に発信者情報の開示を命じる司法判断はミクシィやツイッターでは例があるが、店側代理人の清水陽平弁護士によるとフェイスブックでは初めてだという。

清水弁護士によると、6月、フェイスブックに飲食店の従業員を中傷する匿名アカウントからの書き込みがあった。

経営者は「書き込んだ人物を特定して慰謝料を請求したい」として、仮処分を申し立てていた。仮処分が確定した場合、開示されたIPアドレスやログインの日時などの情報を基に、店側がプロバイダーを通じて書き込んだ人物を特定する。〔共同〕

フェイスブックは「実名制」を原則としていますが、この書き込みをしたアカウントの名前は、本名とは考えられない不審なものだったそうで、店舗の経営者から清水弁護士に対して

書き込んだ人を特定して、慰謝料を請求したい

と、依頼があったということです。

『ネットトラブル対策』によれば、

いわゆる「仮処分」手続は、その名のとおり、一定の権利を有する者(債権者)からの申立てにより、民事保全法に基づいて裁判所が決定する「暫定的処置」ですので、裁判所とすれば、債権者の言い分に合致する一定の証拠が存在し、当該債権者の求める根拠が確からしい、という心証さえ抱けば、「仮の救済」として仮処分命令を発令することができます。

それゆえ、相当の時間をかけてじっくりと言い分や証拠を吟味する必要もないので、比較的短期間に判断をなすことができます。

「ネット攻撃」を受けた者にとってみれば、書込み等の削除という直截的な被告の被害の回復を図るために、最も優れた手続であるとも考えることができます。

としたうえで、

仮処分の申請については、

・・・現行法制化では、仮処分命令を執行する機関(執行裁判所)が 強制力をもって、たとえば、A掲示板のサーバやコンピュータを強制的に操作して書込み等削除したり、発信者情報を開示したりすることは予定されておりません。

あくまで、当該仮処分命令に従わない場合、一日金○○円の支払債務が発生するという処分(間接執行)しかできませんので、実際に仮処分命令が功を奏するか否かは、プロバイダ等の動向によらざるを得ない、という点があります。

としています。

これに関するニュースとして最近では以下のようなものがありました。

和歌山市議中傷訴訟:発信者情報の開示命令判決
毎日新聞 2014年07月30日

匿名による情報提供サイトの掲示板「和ネット」で名誉を傷つけられたとして、和歌山市の戸田正人市議が同サイトの管理人を相手取り、発信者情報の開示を求めた訴訟の判決が29日、和歌山地裁であった。

谷田好史裁判官は管理人に発信者情報のIPアドレスなどの開示を命じた。管理人によると、議員が同サイトを相手取った訴訟は初めて。

判決によると、戸田市議は2013年5から11月に社会的評価を低下させられる書き込みを受けた。

谷田裁判官は「発信者に不法行為に基づく損害賠償を請求するには情報の開示が必要」と指摘した。

書き込みについては、地裁が発信者情報の開示などを命じる仮処分決定を3日付で出している。【倉沢仁志】

これについては当事者である「和ネット」が仮処分の申立てがあった昨年12月に以下のように掲載していました。

和ネットニュース
news.wa-net.net/?p=4282

戸田和歌山市議の発信者情報開示に関する仮処分命令申立書

27日夕方、戸田和歌山市議の代理人(弁護士)から和ネット事務局に発信者情報開示に関する仮処分命令申立を行ったと連絡があった。

和ネットでは、その連絡により該当投稿のデータの保全措置を行った。

これは、投稿者が該当投稿を削除すれば、発信者情報自体が消失してしまうためである。

裁判所が、発信者情報開示に関する仮処分命令を出せば、申立人にデータを提供しなければならないが、和ネットも答弁書を出すので、命令が出るのかどうかは裁判官次第となる。

今回も、発信者情報開示依頼が来た時点で、それを公開していたため対象となった投稿の投稿者の中で名乗り出た投稿者がいたという。その投稿者は申立人と話し合いをしたようで、その投稿は仮処分命令申立の対象から除外されている。

ちなみに、その投稿は投稿者により削除されている。

和ネットの掲示板システムは、投稿者が投稿を削除した場合、データベースから発信者情報(IPアドレス等)も消失してしまうので、通信記録(通信ログ)から、その発信者情報(IPアドレス等)を割り出すことになるが、通信ログは、膨大な量になるため、容量でコントロールされており、現在、2?3ヶ月ぐらいで、流れてしまう。

またこの掲示板ソフトの特性で通信ログでは、特定を誤判断する可能性もあり(和歌山県警解析担当課の解析員もこの問題は承知している)、和ネットとしては、この問題のため、データ解析は行わず、自らの責任で解析を行うのならデータを提供するというスタンスで対応している。

現在、特定のための解析を行えるのは和歌山県警の解析担当課だけであり、その解析担当課も解析不能になる可能性もあるということである。

そのため、民事事件の場合は、投稿者に投稿を削除されたら、もう特定不可能ということになる。

今回の投稿者からは和ネットに対してなにも反論はないが、名乗り出た投稿者もいたようだから、対象の投稿者も発信者情報開示に対して戸田和歌山市議側が動いているのは承知していると思われるので、裁判官が開示についての仮処分命令を出し、開示したデータでプロバイダに問い合わせて投稿者を突き止めて裁判になれば、裁判でおもしろい事実が出てくるのかもしれない。

なお、仮処分命令申立書の表紙は下記のURLで見れる。
www.wa-net.net/userarea/wcity/misc/kari12-27.pdf

掲示板のシステム、発信者情報の探索・解析、仮処分申請からの流れなどがよくわかりますね。

民事手続き、刑事手続きの前段階での仮処分の申し立てという仕組みをきちんと知っておいて、早めに対処していきたいものです。

皆さんの各種相談を承っております。

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