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お知らせ

評判リスクの起こりそうな領域/コーポレート・レピュテーションその39

いつだったか、今年は雪が少なくて、北海道でもスキー場がまともに開けない。

今年は12月の中旬以降になるのではないかと聞いたばかりだったのに一転何年に一度くらいの寒気がやってきて凍えさせてくれています。

最低気温も一気に下がって、着込む服も2枚は多い・・・なんてことになっています。

一気に真冬並みの防寒対策が必要な季節になってしまいました。

巷ではインフルエンザが流行の兆しを見せているそうですので、皆様どうぞ体調管理にお気をつけください。

コーポレート・レピュテーション その39

櫻井通晴著『レピュテーション・マネジメント内部統制・管理会計・監査による評判管理』を紹介しています。

今回は第4章「レピュテーション・マネジメントによる企業価値の増大」から「企業価値とは何か」について。

著者の櫻井氏は言います。

レピュテーション・マネジメントが企業価値を創造するのか。

この質問に対して答えるには、まず初めに企業価値とは何を意味するかを明らかにしなければならない。

価値観が個人によって異なるように、企業価値が何かについても人によっても会社によっても国によっても異なるからである。

企業価値は、一般に、「1.株価総額」「2.一株当たり利益に株価総数を乗じたもの」、あるいは「3.将来のキャッシュ・フローの現在価値」と考えられている。

「ネット有利子負債+株式時価総額」という主張もある。

これらの見解のうちグローバルスタンダードになっているのは、「3.将来のキャッシュ・フローの現在価値」である。

企業価値というときに多くの人々がイメージするのは、以上の3つである。

しかし、経済価値イコール企業の価値と考える日本の経営者はきわめて少ない。

企業価値には経済価値だけでなく社会価値や組織価値を含むとする見解が多くの日本の経営者の支持を集めている。著者もまた、企業価値は経済価値だけでなく、社会価値や組織価値を含めるべきだと考えている。

経済価値(ecnomic value)は、従来の日本企業では、経常利益の増大にあると考える経営者が多かったが、最近では、EVAやキャッシュ・フローの増大を目標にする企業が増えている。

社会価値 (social value)は、地域社会への貢献、環境保護、コンプライアンス意識の向上などによって高められる。

一方、組織価値 (organization value)を高めるには、組織風土、経営者のリーダーシップ、従業員の仕事への熱意・チームワーク、倫理観、ビジョンと戦略の整合性などを意味する。

組織価値には従業員のやる気や潜在的な能力、ブランド価値など無形資産の効果性的な活用が含まれる。

コーポレート・レピュテーションが高まることによってキャッシュ・フローの現在価値などの経済価値だけでなく、組織価値、社会価値が高まり、企業価値を増大させる。

また、著者は「レピュテーション・マネジメント向上のためには何が必要か」について以下のように述べています。

評判を落としたために企業を倒産の憂き目から救うためには、レピュテーション・リスクの領域を識別して、リスクの潜在的な領城を明らかにしてそれに対応していくことが必要である。

レピュテーション・リスクの起こりそうな領域には、コーポレート・ガバナンス、倫理規範とコンプライアンス、製品の安全性、IT、従業員の健康と安全、環境保全、M&Aといった問題がある。

したがってレピュテーション・マネジメントは、これらの領域で企業に潜在的な損害を与える可能性のある幅広い出来事を、組織的・論理的な方法で識別し積極的に損害を最小限にするように働きかけることが必要である。

フォンブランとヴァン・リールは、レピュテーション・マネジメントは実質的にリスク・マネジメントを意味するとさえ述べている。

コーポレート・レピュテーションは経営者と従業員の行為によって決定づけられるから、組織構成員の全員がレピュテーションを高める努力を行なうことが要請される。

コーポレート・レピュテーションでは投資家、証券アナリスト、マスコミ、業界団体・取引先、地域社会、顧客など多様なステークホルダーが評判を決めるから、経営企画部(あるいは品質管理部ないし経営品質部)が所管してバランスト・スコアカードと戦略マップを用いて実行されるべき戦略やアクション・プランを策定することなども有効な方策の1つであると考えられる。

しかし、経営企画室が所管するバランスト・スコアカードだけで、多様なステークホルダーの管理が必要とされるコーポレート・レピュテーションのマネジメントが全うされるわけではない。

現実には、社内の体制として最高経営責任者の戦略や経営活動などのコーポレート・ガバナンスをチェックできる監査役、内部監査部などのほか、外部の目を高めるためにPR室やIR室などの協力が必要となる。

内部統制もコーポレート・レピュテーションに効果的である。しかしそれらを統括する責任者が設けられていないと、効果的に企業のレピュテーションを高めることはできない。

そこで著者は、レピュテーション担当役員(corporate reputation officer;CRO)の設置を提案してきたのである。

「レピュテーション・マネジメントは実質的にリスク・マネジメントを意味する」とはいうのは、なかなか興味深い主張ですよね。

本書では、レピュテーション・リスクの起こりそうな領域として、

◆コーポレート・ガバナンス
◆倫理規範とコンプライアンス
◆製品の安全性
◆IT
◆従業員の健康と安全
◆環境保全
◆M&A

を挙げています。ちょっと思い出しただけでも、ここ最近ニュースになった企業の事件や出来事はすべて上記のいずれかの範疇に当てはまるものばかりではないでしょうか。

★ 今週のテーマ 「レピュテーション・リスクの起こりそうな領域」

今年2014年10月10日、消費者庁が発表した「特定商取引法違反に基づく処分件数の推移(平成26年8月1日現在)」が大きな話題を集めました。

この一覧には平成15年4月~平成26年8月1日時点までの間の特定商取引法による過去約12年分の業者の処分リストが実名で掲載されるという豪華版でした。
www.caa.go.jp/trade/pdf/141010kouhyou_1.pdf

ただ消費者庁のこのリンクがどこかから批判が出たのか、現在はリンク切れになっているので、こちらで見てください。

特定商取引法違反に基づく処分件数の推移(平成26年8月1日現在)
tinyurl.com/lp7wxhw

評判を回復するための方法の1つとして社名変更というのがあることについては以前ここで取り上げたことがあります。

ただネット社会ですから、「悪いこと」をすれば、何らかの方法やキッカケで確実に捕捉されてしまうのは皆さんご存じの通りです。

悪いことはできませんなあ。

それはさておき、現在さまざまな問題点が指摘される時、つまり、レピュテーション・リスクの起こりそうな領域として、

◆コーポレート・ガバナンス
◆倫理規範とコンプライアンス
◆製品の安全性
◆IT
◆従業員の健康と安全
◆環境保全
◆M&A

以下があることはすでに触れました。そして、現在起こっている問題のほとんどはこの五胡化に集約されるとも書きました。

ちょうど今問題になっていることで触れると米国を中心に相次ぐ死傷事故と大規模なリコール(回収・無償修理)を引き起こしているタカタの欠陥エアバッグ問題。

米でタカタ不信高まる 国交省、異例の調査リコール指示
2014/12/5 日本経済新聞
www.nikkei.com/article/DGXLASDG04H83_U4A201C1EA2000/

タカタ製のエアバッグ欠陥問題で、国土交通省は4日、日本でタカタや完成車メーカーに調査リコール(回収・無償修理)を指示する方針を固めた。

ホンダなどが全米で調査リコールに踏み切ることを受けた異例の措置で、「日本車たたき」への波及を回避する狙いがある。

ただ、米議会などは対応が後手に回るタカタへの批判を強めており、米世論の動向が事態収拾のカギを握っている。

死傷事故やリコールにつながったタカタ社の製品は、リコール記録や当局、自動車メーカーによると、メキシコ・コアウイラ州フロンテラの工場で作られていたことがわかっているとか。

タカタ欠陥エアバッグ、尾を引く「メキシコの誤算」
2014年 11月21日 ロイター
jp.reuters.com/article/businessNews/idJPKCN0J50U120141121

タカタは2000年、人口7万5000人あまりの同地域に北米向けを中心とするエアバッグの製造工場を建設した。・・・エアバッグ生産コストの削減策として大きな期待を寄せていた同工場が、タカタにとって「誤算」に転じた出来事は2006年に起きた。

皮肉にも、同社が東証第一部に上場した記念すべき株式新規公開(IPO)の年だった。

同年3月30日の夕方、工場内で数回にわたり原因不明の爆発が発生。工場からは無数の火の玉が飛び散り、外壁は吹き飛び、1キロ離れた家の窓も壊れるほどのすさまじい爆発だった。・・・

この爆発についてはタカタからの公式説明はなく、原因は不明のままだ。・・事故後、1カ月もしないうちに同工場は生産を再開、ホンダやフォードが部品不足を理由に自社工場を停止する事態は避けられた。・・しかし、この爆発によって同社のメキシコ戦略は生産遅延という大きな問題に直面した。

操業強化のため、作業員への容赦ないプレッシャーがかかり、特にメキシコに赴任してきた米国人のマネージャー達からの圧力は強かった、と同工場で2008年まで管理職として勤務していたアレハンドロ・ペレス氏らは語る。

ここからロイターの記事では、「生産目標達成へ容赦ない圧力」。

それに伴って生産目標の達成を容易にするため、誤って出荷される事がないよう分別されていた欠陥部品が規則に反して製造ラインで、その欠陥部品の修理をするという問題行為が発覚するなどしていたと報じています。

こういうことは問題が起こると必ずほじくりかえされます。

タカタ株価
www.nikkei.com/markets/company/?scode=7312

また、今回の問題はアメリカでトヨタ車を運転中に発生した急加速事故について、事故の原因がトヨタ車にあると主張され、2009年から2010年頃にかけて起こったトヨタ自動車の大規模リコールに似てアメリカの政治家が激しく暗躍している構図もあるようです。

タカタ:米下院委も公聴会 ホンダ、全米リコールを表明
mainichi.jp/select/news/20141204k0000e020142000c.html

【サンフランシスコ清水憲司】自動車部品大手タカタ製エアバッグのリコール(回収・無償修理)問題で、米下院エネルギー・商業委員会は3日、上院に続き公聴会を開いた。

ホンダは、原因を特定せず米当局への届け出が必要ないリコール(調査リコール)を全米で実施すると表明。

タカタ幹部はホンダへの協力を表明したものの、米当局などが求めている全米リコールは「データの裏付けがない」などと訴え、議員や米当局幹部から批判を浴びた。

「我々は調査リコールを全米へと拡大していく」。北米ホンダのリック・ショステック上級副社長は、事故リスクの高い湿潤地域を優先させつつも、米当局が求める全米での実施を表明した。代替部品の生産が追いつかない恐れがあるため、ホンダはタカタ以外の部品メーカーから交換用部品を調達する方針も明らかにした。

タカタ製エアバッグは作動時に金属片が飛び散り、運転手らを死傷させる恐れがあるため、米国内では南部を中心に約780万台がリコールされている。

米当局が全米リコールの対象とするマツダ、米フォード・モーター、米クライスラー、独BMWも追随すれば対象台数は800万台規模で上乗せされる見通しだ。

また、タカタの清水博・品質保証本部長は公聴会で「自動車メーカーのリコール拡大に協力する」としながらも、「全米リコールはデータの裏付けがない。(欠陥の原因となる)湿潤な地域のリコールを優先させるのが最善」と改めて主張した。議員からは「所有者を混乱させる」「銃を突きつけられて運転しているようなもの」と厳しい声が上がった。

また、同日証言に立った米運輸省道路交通安全局(NHTSA)幹部は「タカタは全米リコールを拒否した。その根拠も示していない」と批判した。その上で「さらなる対応が必要だ。タカタや自動車メーカーが行動を拒否するなら、米司法省と連携する」と、日本の課徴金に相当する民事制裁金の適用を示唆。あくまで全米リコールを求める姿勢を示した。

米運輸省道路交通安全局幹部の「タカタは全米リコールを拒否した」などと言う発言はアメリカで多くの同調を得ると考えられます。

かつてのトヨタ自動車のリコール問題においても、その後トヨタ車の急加速の再現実験はねつ造出会ったことなどが発覚するなどしてグダグダの決着となり、アメリカ政府のトヨタバッシングもアメリカの中間選挙が実施後終息しました。

トヨタ自動車の大規模リコール (2009年-2010年)
tinyurl.com/kwquot5

今年2014年のアメリカ中間選挙はすでに11月に終了し、オバマ政権にとって野党の共和党が米議会の上下両院で過半数の議席を獲得して議会の主導権を共和党が握ったことは皆さんご存じの通りです。

こうした議会での劣勢、支持率が低迷するオバマ大統領の民主党が国内の難題をかき消すための仕掛けをしていると勘ぐりたくもなりますが、アメリカからメキシコへの工場移転など雇用の問題も含めての問題に拡大しています。

このような1つの問題が多様な問題へと絡み合って膨れ上がっていった時には白黒はっきり決着がつくというよりは加熱した報道が終息していく形になっていくのでしょう。

いずれにしても、後々のことを考えても、タカタ社は全米リコールは「データの裏付けがない」などと訴えているようですから、このあたりのデータでの証明を懸命にやらなければならないでしょう。

最初に提示したレピュテーション・リスクの起こりそうな領域

◆コーポレート・ガバナンス
◆倫理規範とコンプライアンス
◆製品の安全性
◆IT
◆従業員の健康と安全
◆環境保全
◆M&A

これでいけば、タカタ社のリコール問題は「製品の安全性」に該当しますが、それに伴って出てきた生産目標達成へ容赦ない圧力は「倫理規範とコンプライアンス」や「コーポレート・ガバナンス」の問題にも拡大しました。

1つ1つは独立した項目ながら、非常時にはお互いにリンクし合いながら大きくなっていくのがレピュテーション・リスクといえます。

ですから、もう一度だけ問いかけておきたいと思います。

御社についても「レピュテーション・マネジメントは実質的にリスク・マネジメントを意味する」という観点から上記の点を考えてみることをお勧めします。

皆さんの考えはいかがでしょうか?

皆さんからの率直なご意見をお待ちしております。

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