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労働者派遣法の改正におけるレピュテーションリスク

安全保障関連法案の成立を確実にするため、会期を9月まで大幅延長している国会ですが、安倍内閣が労働改革の柱に掲げる労働基準法改正案については流動的な扱いになっているようです。

労働基準法改正案は今国会では成立が「絶望か」ともいわれていますが、企業にとっては労働基準法改正案がどうなるのかに注目が集まっています。

労働者派遣法の改正案について
www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/zengo.pdf

現在は研究開発や秘書など専門26業務を除き、派遣社員の受け入れ期間の上限を3年にしていますが、改正案が施行されれば、企業は人を変えれば、同じ仕事を無期限で派遣者に任せることができます。

どの企業にとってもかかわってくる可能性のあるこの労働者派遣法の改正案について今回はまとめておきたいと思います。

労働者派遣法の改正案について

労働者派遣法の改正案は、今まで2度廃案になっています。1度目は2014年の通常国会で条文ミスという異例の事態で廃案となり、2度目はアベノミクス解散によって廃案となっています。

安倍内閣は今回3度目の正直として改正案の成立を目指しています。

改正案のポイントは3つあります。

1つめは、これまでの専門26業務の撤廃です。

専門26業種とは、通訳・翻訳や秘書、速記、ファイリング、インテリアコーディネーターや金融商品の営業などの専門性の高い業種のことで、この職種については期間の制限を設けず派遣に任せることができました。

その他の業務では、派遣を活用できる期間の上限を3年としてきました。専門26業種に就いている人は、それ以外の業務を任せようとすると、期間3年で契約を終了させなければいけないという縛りがなくなります。

2つめのポイントは、26業務以外の期間制限を3年としていたことろを、個人単位の期間制限とし、派遣先の企業の同じ部署で働ける期間を3年とするということです。

これによって、同じ派遣労働者が部署を異動したことにすれば3年を超えて就業することが可能になり、派遣労働者としての勤務の継続を希望している人にとっては、就業が確保されることになります。

3つめのポイントは、すべての労働者派遣事業を許可制として、雇用の安定を図る措置がとられることです。

派遣元の事業主は、期間の上限に達した派遣労働者に対して新たな派遣先を提供するなどの雇用安定を図る措置を講じる必要が生じます。

この改正に対しては、派遣労働者の雇用環境の改善になるとして賛成の声がある一方で、社員を一生涯派遣で使い続けることを可能にする案だとして反対する声もあります。

たとえば、この法案では派遣受け入れ期間を3年とはしていますが、部署を異動させれば同じ労働者をずっと派遣社員として雇用することが可能になります。

また、受け入れ期間の3年は労働組合の意見聴取や反対意見に対して説明しておけば延長可能としており、話を聞くだけ聞いて無視して派遣を利用し続けることも可能になります。

企業にとって都合のいい改正案であり、これが成立することでリストラが促進する流れになると懸念する専門家もいます。加えて正社員の求人が減る可能性も指摘されています。

実際にドイツでは、派遣の受け入れ期間の上限を撤廃した結果、10年もかからずに派遣労働者が2倍以上になったという事例もあります。

与野党が対立しているのは、一言でいえば「雇用の安定」ということになります。

与党は法改正で雇用は安定するとしていますが、野党は逆に不安定になるとして反発しています。

よって与党は改正案に雇用安定措置を盛り込み、労働者が3年の派遣期間を終え、派遣先雇用を直接依頼して拒否された場合には、派遣会社は労働者と無期雇用を契約を結ぶ義務を負うと。

しかし、この無期雇用の契約への切り替えに対して、派遣会社から負担が大きいため、消極的な声が出されています。

私たちは賛成か反対かというよりは、改正案が可決された場合、どう対応していくかを考えておく必要があります。

仮に今国会で改正案が廃案となったとしても、秋の臨時国会や来季の通常国会では必ずこの労働者派遣法の改正案は上程され、可決されるからです。

すでに議論されているように、改正案の盲点を突いた事例を企業が採用する例も当然ながら出てくると思いますが、そこは市場原理が働いている我が日本です。

部署を異動させながら同じ労働者をずっと派遣社員として雇用するとか、話を聞くだけ聞いて無視して派遣を利用し続ける企業も出てくる。

しかし、そこでは必ず「ブラック企業批判」がネットをはじめとした場所で巻き起こります。

コンプライアンスを遵守するのは当然として、今や企業は法律の枠組みからさらに踏み込んだ倫理上の規範もある場合には問われます。

改正案の盲点を突く派遣社員の雇用は長い目で見れば、企業にとってはプラスにはならずマイナスに働くでしょう。

今国会で成立するかどうかはともかく、企業はこの改正案に対してどう動くかはすでに考えてあるか、遅ればせながら今から考えておくか、どちらかしかありません。

そこでみなさんに問いたい。

1、改正案の問題点の1つとされる「派遣労働者が3年を過ぎて同じ職場で働きたいと思っている」場合、あなたの組織はどう対応しますか?

2、期間の定めなく同じ職場で働いてきた専門性の高い専門業務の派遣労働者の契約が3年となりました。引き続き雇用はしたいが、派遣先の企業の同じ部署で働ける期間は3年です。あなたの組織はどう対応しますか?

たとえば、2の場合、政府は雇用安定措置を設けて、派遣会社は仕事の継続を求める労働者を直接雇用するよう企業に求めることができるようにしたいと考えているようですが、それはあなたの組織では可能ですか?

理論上は、企業は、3年ごとに人を入れ替えれば、派遣労働者を同じ職種で継続して使えることができますが、あなたの組織はそうしますか?

理屈上、派遣労働者は3年ごとに新しい職場を探さなければなりますが、派遣労働者の中には将来は正社員になりたいという希望を持っている人も多くいますが、その要望についてあなたの組織は検討しますか?

派遣労働は元来、一時的な措置として利用できる制度でした。企業が一定の職種について、繁忙期だけ人手不足になってしまうことを避けるために一時的に仕事ができる人を増やすという目的です。

企業と派遣労働者には直接の雇用関係はないため、必然的に雇用は不安定となり、また低賃金を強いられやすいことから、さらに派遣労働が拡大していうのはどうかという懸念の声は常にあった。

しかし、派遣労働者をまるで「機械の部品」のように取り換えの利くモノとして扱う時代は終わりつつあります。

労働法はその抑制システムとして機能してきましたが、これからは企業自身が自らの「法律」を自らに課して派遣労働者に対する時代になったのです。

世界の流れは、「同一労働・同一賃金」です。

同一の仕事(職種)に従事する労働者は皆、同一水準の賃金が支払われるべきだという概念であることは皆さんご存じの通りで、性別、雇用形態(フルタイム、パートタイム、派遣社員など)、人種、宗教、国籍などに関係なく、労働の種類と量に基づいて賃金を支払う、また職種が異なる場合であっても労働の質が同等であれば、同一の賃金水準を適用するのが当たり前の時代がやってくる。

同一労働・同一賃金であるにもかかわらず、支払う賃金が違っている企業は批判にさらされる時代がもうそこまできています。

日本では現在、同一労働であっても、派遣労働者と正社員の間には福利厚生も含める賃金は2倍以上の開きがあると言われています。当然ながらこれは差別であるという主張も成り立つ土壌はすでにあります。

派遣労働者と正社員では同一の仕事はありえないという組織は特に重く考える必要はないでしょう。

しかし、多くの企業は同一労働にもかかわらず、身分の違いで格差のある賃金を払っています。賃金を見直すばかりでなく、労働の内容や中身も今回の改正案を機に考えてみるべきでしょう。

労働者派遣法の改正案のニュースを見て、対岸の火事と思っているなら、それは間違っています。

あなたの企業の評判を損なう要因の幾つもがそこには潜んでいるのですから。

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