お知らせ
10.202015
女性蔑視と批判を受けた広告問題について
10月7日に発足した第三次安倍内閣で首相は「一億総活躍社会」というスローガンを掲げ、改造内閣では新たに「一億総活躍相」を新設。「一億総活躍相」の英語表記は「Minister in Charge of Promoting Dynamic Engagement of All Citizens」とすると発表しています。
この新設の「一億総活躍相」「一億総活躍社会」について、早速野党からは「なんだかよくわからない」と批判があり、石破地方創生相は「突如登場した。国民に戸惑いがないとは思わない」と発言。
挙句は略称が「一億相」か、「活躍相」かなど定まらないとして新聞は書きたてています。
私は、略称はそのうち「一億円」になり、時間の経過とともに「ジャンミニ」すなわち「ドリームジャンボミニ宝くじ」からの略称に移行するだろうと推測しています。
「ジャンミニ」の「ミニ」は「Minister」の略なのでこれで決まり!じゃないでしょうかね。
冗談はさておき、第三次安倍改造内閣は安保関連法案で下げた支持率を少し持ち直したと世論調査の結果が示しています。
「一億総活躍社会」、「誰もが活躍できる社会づくり」「ニッポン1億総活躍プラン」…etc これらにだれが反対できるのでしょう。
中身がどうあろうと、誰も反対のしようのないプランを堂々掲げるのが日本で首相を長く続ける極意に感じてしまいます。
女性蔑視と批判、相次ぐ
新しいところでは、菅義偉官房長官が9月末にテレビ番組に出演した際に、福山雅治さんと吹石一恵さんの結婚に関し「この結婚を機にママさんたちが一緒に子どもを産みたいという形で国家に貢献してくれればいいなと思う。たくさん産んでください」と発言し批判が相次ぎました。
政治家の発言では、2007年1月、当時の柳沢伯夫厚生労働大臣が「産む機械、装置の数は決まっているから、あとは一人頭で頑張ってもらうしかない」と発言したことをご記憶の方もいるでしょう。
典型的な「子供を産む」=「国家への貢献」という旧来の考え方に基づく発言であり、それに対する批判です。こうした「旧来の考え方に基づく発言⇒それに対する批判」は毎日のように起こっています。
少し挙げてみると、
味の素が流した、「とんでもない」性差別CM
toyokeizai.net/articles/-/43365
ルミネのCM動画がセクハラで酷いと炎上
www.bengo4.com/other/1146/1307/n_2893/
日本だけでなく、韓国でも似たような問題が起こっています。
韓国KFCの広告が女性蔑視?批判受け公式謝罪
www.recordchina.co.jp/a120454.html韓国KFCが出した「スモーキーワイルドチキンバーガー」の広告だ。「あなた、気分を変えたいからバッグでも買って」との女性の発言とみられる文句の下に、「うむ…じゃあ俺の気分は?」とのせりふ。
そしてこの男性の内心を表現するためか、炭火が赤々と燃えるイメージが添えられている。
カップルの日常の一こまを描いたようだが、この広告を目にした女性たちから、「女性がブランドのバッグを欲しがるという否定的な認識が根底にある」と批判の声が相次いだ。
もちろん批判だけでなく、賛成もあり、賛否両論なんですが、批判される視点の1つに「旧来の考え方に基づく発言」があることは間違いないでしょう。
旭化成の広告では「家事ハラ」の定義自体が間違っており、差別的だと炎上しました。
賛否が分かれるのは差別と区別の定義が人によってあいまいなために起こるのではないでしょうか。
一方は「区別」して言っていても、相手は「差別」として聞こえる。その逆もある。
ただ現在では性別によってなにかの役割が決まっているかのように発言することは時代に逆行もし、常に批判の対象になるという意識が必要ということ。
ラーメンのCMで「私作る人、僕食べる人」といわせて問題になり、2カ月ほどで放映中止になったのが1975年だそうで、24年後の1999年には男女平等を推し進めるべく「男女共同参画社会基本法」が施行されました。
総務省の「労働力調査(基本集計)」によると、日本の労働力人口(就業者及び完全失業者の合計)は、1998年をピークに長期的に減少。
男女別に見ると、男性は1997年をピークに減少している一方、女性は2013年に過去最高となる2,804万人を記録しました。
また、1997年に共働き世帯数が男性雇用者の夫と無業の妻世帯数を上回り、それは現在も増加し続けています。そう「一億総活躍社会」に世の中は向かっているのです。
男女が互いに人権を尊重しつつ、能力を十分に発揮できるために作られた「男女共同参画社会基本法」の施行からすでに16年です。「私作る人、僕食べる人」騒動からは今年で40年。
賛成反対の意見はともかく、性差別と認識されるような発言はもとより、その認識を変えていく必要があるでしょう。
内閣府男女共同参画局は編纂する「男女共同参画白書」の中でそれを「性別分業スタイルの非主流化」と表現しています。
「産む機械」発言の柳沢伯夫(当時)厚生労働大臣は1935年生まれの80歳、「子どもを産みたいという形で国家に貢献」発言の菅官房長官は1948年生まれの66歳。
昨年、渋谷区のPTAの研修会で「食事を作るのはお母さんたちです」という発言をして問題になった森富子渋谷区教育長の生年月日はわかりませんが、小学校校長から教育委員会教育長になっているのでやっぱり60歳前後でしょう。
この戦前戦中戦後生まれの人たちの認識はもう改まることはありません。それよりも下の世代、現在の40代、50代の人たちは意識して認識を変えないと同じような発言をし、騒動を起こしています。
最近のいくつかの騒動を見ても問題となる視点はもう決まっているのです。しかし、その認識がないためにそれを世に出し、評判を落としてしまう。
「性別分業スタイルの非主流化」は安倍内閣の掲げる「一億総活躍社会」の提唱によって、動かしがたいものとなったと改めて思います。
組織の中の現在の40代、50代の人たちがそれにアジャストできるのか、組織の命運を握っていると言えます。
謝罪の仕方の注意点
しかし、その認識がない人が間違いを犯した場合、その対応は木で鼻をくくる形に終始しがちです。
悪いと思っていないから当然そういう対応になるのですが、世の中に対する認識間違いで犯したミスを木で鼻をくくった対応による「燃料投下」でさらに炎上させてしまうのです。当事者は2度目の「なんで?」で大炎上です。
先のルミネの「女性応援」CMでは、その謝罪に対しても批判が巻き起こりました。
ルミネの「女性応援」CM、セクハラ、女性蔑視と批判殺到 誠意ないお詫びで、さらに炎上
biz-journal.jp/2015/04/post_9698.html「この度は、弊社の動画においてご不快に思われる表現がありましたことを深くお詫び申し上げます。今後はこのようなことのないよう、十分に注意してまいります」
この簡素なお詫び文に、「誠意を感じられない」「素っ気ない」などの声が上がったのだ。
ルミネにすれば「じゃあどうすればいいの?」って思っているのでしょうが、こうした「誠実でない」「素っ気ない」といわれる対応は謝罪の仕方云々よりも、起こした問題に対する認識の濃淡が影響していると考えられます。
問題に対する認識に落差があると、謝罪された方は「取り敢えずネットで騒がれちゃったから一応謝っておこう♪的なノリ」を感じるわけです。謝罪しているほうにそんなつもりはなくても、そう受け取られてしまっているわけです。
世間の地下に脈々と流れる潮流にはだれも逆らえませんから。好きであろうが嫌いであろうが、賛成であろうが反対であろうが、逆らえない。それが時代だから。