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お知らせ

不信の連鎖が拡大するメカニズム

大手不動産5社の中間決算を見ると、住友不動産以外の4社は売上計上戸数が減少傾向になるようです。

ただし現在進行中の横浜市のマンションに端を発した旭化成建材のくい打ちデータ偽装問題が拡大の様相を呈する中で、これらの影響は今回の中間決算には組み込まれてはいないようです。

都心部の高価格物件は、売り出し日に即日完売といった状態が続く中で、今後これらがどう影響してくるか。

密かにささやかれている都市圏のタワーマンションの暴落の危機話等も含めて、今後目が離せません。

不信や疑惑の目はマンションだけじゃない。

読売ジャイアンツは、野球賭博に関与した3選手に契約解除を通達、3選手には無期限失格処分を言い渡し、社長と会長は期限を設けず当面の間、取締役報酬を50%減俸、渡辺恒雄最高顧問、白石興二郎オーナーは、2カ月間の取締

役報酬を自主的に全額返上とすると発表しました。

3選手はそれぞれ「軽はずみに始めてしまった。その後もどうしてもやめられなかった。自分の甘さを後悔している」「いろんな人の人生をむちゃくちゃにしてしまい、償っても償いきれない。この思いは死ぬまで引きずると思います」「多くの方に迷惑を掛け、自分なりに反省しています」と語ったそうですが後の祭り。

この反省の弁を述べる前には相談の上、携帯電話から野球賭博のやりとりのメールを削除、「食事を賭けていただけ」「復元されたメールに金銭の記載があるとしても、それは冗談を言い合っていたもの」などと虚偽の弁解を続けていたことが明らかになるなどしています。

くい打ちデータ偽装は旭化成建材だけなのか、野球賭博は3選手に限られるのか。それ以外にもあるのではないか。疑心暗鬼の目で消費者に見られているのが現状です。

疑惑の連鎖の理由を考える

実際すでにテレビ等で「あんなの普通ですよ」と話している人も出てきています。

2015/10/23「杭打ちのデータ偽装は日常茶飯」
旭化成建材の元現場代理人が仰天暴露

現場代理人「データの改ざん、転用なんて、ものすごく普通にあることですよ。現場仕事ですので、データの取り忘れとか雨風で汚れるのはよくあること。不正という意味合いを抜きに、『書類をまとめてナンボ』というところがありますから、データの作りようがないときは転用するしかないんです」

Q.「データが取れない」と報告するとどうなるんですか?

現場代理人「まず怒られて、どうしようかを考えて、『データをなんとかしろ』という大人的な言い方で、データを作れと言われる。杭工事というのは現場で一番最初にやる工事で、ここの工期が延びると全部に影響してしまうです。なので、非常に厳しく言われます」

Q.今回、マンションが傾いたことについてはどう思いますか。

現場代理人「傾くこともあるんだなという印象ですね。こういう不正があることは知ってましたが、それでも傾かないものだと思っていました」

さりげなく、しかし爆弾発言。それも1発の爆弾ではなく、全国津々浦々の建物に対して疑惑の目を向けさせる絨毯爆撃になっていることを証言している人が自覚していないらしいところが恐怖です。

加えて、旭化成は子会社の旭化成建材(東京)が過去約10年間に行ったくい打ち工事3040件の調査について、元請けの建設会社との確認・照合作業が難航し、予定していた進捗状況の公表を取りやめると発表しました。

短日時で簡単には調べもつかないってことなのでしょう。また急いで「大丈夫」と公表して、後でひっくり返る危険性があるよりも慎重さを選んだということでしょう。

一方のプロ野球は、日本野球機構(NPB)の熊崎勝彦コミッショナーが3選手の処分は発表、熊崎コミッショナーから調査を委嘱された調査委員会が最終報告書を提出したものの、「重要な関係者から十分な聴取の協力が得られず、携帯電話の提出も受けられなかった。そのため組織的全体像までを明らかにできているものではない」と全容解明には至らなかったとしています。

調査委員会の一人は「(我々には)何の強制力もない。聴取に応じてくれなければ話は聞けない」とも述べたとか。

記者会見ではコミッショナーは以下のようなやり取りがあったようです。

スポーツ報知 11月11日

Q.今後、巨人以外の11球団への調査の予定は?

「今の段階で何か特別なことをするということはない」

Q.調査の中で、反社会的勢力の存在をうかがわせる状況、名称などが出てきた経緯はあったのか?

「『確実な証拠は得られない』というあたりから理解していただきたい」

Q.去年、巨人が笠原のバカラ賭博を把握した段階でNPBへの報告義務はなかったのか?

「その時点で、笠原選手が付き合っている人の中に野球賭博常習者がいると分かってなければ、告発や通報のしようがない」

これを聞いて、多くの人は「やっている奴がまだいるだろう」と普通は思う。しかし、逆に「長いこと引っ張らずにどこかで早めに幕を引くべきだ」という圧力もあちこちであると推測されます。

たしかに捜査権もなく強制力もない組織が全容解明をするのは難しいのでしょう。いつまで調査すれば気が済むのかと言われれば答えもないですが、火がくすぶっているのに消化しましたと言っている感は消費者に疑念を残す。組織は存続する意思がある限り、その歴史に背を向けて生きることはできません。

1985年8月に墜落し死者520名を出した日本航空123便の事故では墜落現場である「御巣鷹の尾根」には事故の翌年、慰霊碑が建立され、毎年慰霊登山などが行われているのはご存じのとおりです。事故から30年経っても、遺族にとっては癒えない傷を残している。自己原因の解明にも時間を要しました。

事故から15年経過してテレビで放映されたCVR(コックピットボイスレコーダ)では、

日本航空123便墜落事故
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

・・・乗務員の努力が明らかとなり、それまで乗務員に批判的だった多数の乗客遺族らから、感謝や過去に非難・批判した事への謝罪の手紙や声が乗務員の遺族に届けられたという。

2006年4月には羽田空港整備地区に残存機体の一部など、事故に関する資料を展示する日本航空安全啓発センターが開設されました。

航空事故調査報告 (PDF)

終らないんです、組織が存続する限りは。事故や事件の原因を仮に解明できたとしても終わらない。それらをどう後世に伝え、どう生かすのかを考え続けなければならないから。

2005年に起こった地震などに対する安全性の計算を記した構造計算書を偽造していたことを公表したことに始まる一連の耐震偽装問題は、2013年前後をもって裁判が終了しました。

構造計算書偽造問題

当事者の多くの会社はなくなりましたが、業界にはこれらについての問題をどう捉えなおすかという課題は残ったし、それは今も続いています。その続く流れの中で起こったものが今回のくい打ちデータ偽装問題なのではないか。

負の連鎖拡大のメカニズムとその対策

そういう意味では組織で起こった事件や事故は解明しても終わりなしといえますし、解明されなければ新たな火種としてさらなる不祥事を引き起こすと言えるのかもしれません。

また、自社で起こった事件や事故に限らず、業界内で起こった事件や事故は、言葉で言えば「事故解明委員会」なるものを設置し、我がこととして事故や事件の原因の究明やその対策に知恵を絞る必要があるでしょう。

それが業界内でとどまらずに世の中の事件や事象について考えられるならば、なおいいですが、そこまでのコストをかけられる組織はそうはないですが、少なくとも業界内での事件や事故については無関係でも「原因究明委員会」を設置して自社内に取り込む作業が必要でしょう。

くい打ちデータ偽装問題や野球賭博問題はそれが起こった組織にのみに作用するわけではなく、その属する業界に多大な影響を与えるのですから。

そして、よく言われる消費者は「安全」と「安心」を分けて考え判断していることを把握しておくことも重要な要素になるでしょう。

たとえば政府が「安全です」と宣言したとしても、それがすぐに「安心」につながって購入に至るわけではないということですよね。

「安全」と「安心」の間には大きくて深い溝があって、安全だと思うけれど安心して買えないという心情が消費者にはぬぐえない。

ファストフード店に提供されている原材料が怪しげなものであったと映像付きで報道されれば、消費者は離れていきます。原材料を提供していた工場を点検し検査して安全宣言を出しても離れた消費者は帰ってきません。

いくら安全といわれても、決して安心はできないからです。安心できると思えるまで消費者は帰ってこない。

「日本の安心はなぜ、消えたのか」の著者山岸俊男さんはこの本の中で

・・・評判には「追い出し」作用と「呼び込み」作用の二つがあるということです。

マグレブ商人は裏切り者を追い出すために評判を利用したわけですが、ネット社会ではいったん追い出されたとしても別名で再度参入することができます。

そのため、評判の持つ「追い出し」効果は役に立ちません。その代わりにネットのような開かれた社会では、評判の持つもう一つの側面、すなわち「呼び込み」効果が発揮されます。

すなわち、悪い評判を流すことで相手を追い払うのではなく、いい評判を積み重ねていくことで自分のところに人が集まってくるようになるということです。

老舗が人々の信頼を集めるのは、長年にわたり正直な取引を続け、客の期待を裏切らなかったからこそその店は「老舗」になれたのだろうとみんなが考えるからです。

それが「ブランドの信用」というわけですが、ネット社会ではそうしたブランド化が企業のみならず、個人のレベルでも起きているのではないでしょうか。

と述べています。

※マグレブ商人とはヨーロッパ中世の地中海貿易で活躍した商人のこと

山岸さんは仮説として

農村やマグレブ商人のような閉鎖的な社会では「悪評」が制裁的効果を持っていたのに対して、インターネット社会に代表される開放的な信頼社会ではポジティブな情報、すなわち「いい評判」が人々を協力行動へ向かわせているのではないか

と投げかけています。

一定の時間の歴史の中で構築されていく組織や企業の評判は現在では気にされなければならない必須項目になりました。ネット上の悪評にも目を光らせないといけません。

しかし、不幸にも起こってしまった事件や事故を糧に私たちはいい評判を積み重ねていくことで自分のところに人が集まってくるようにしなければならない。

ネットいうオープンな社会の到来により「ブランドの信用」による「呼び込み」が求められている。

自らが事件や事故を起こすということは、誰かを「追い出す」のではなく、自らが市場から「追い出している」ことになるので論外ですが、人を集めるには「いい評判を積み重ねていく」しかない。

いい評判を獲得するための題材は世の中に転がっています。あとはそれを題材と思うか思わないか。

不振な業界であったとしても好調な企業というものは存在するものです。その理由は何か。どうするべきかはもうわかっています。

あとはやるかやらないか。くい打ち偽装も野球賭博も他人事ではありません。

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