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お知らせ

消費者の煩雑な判断の代行業/コーポレート・レピュテーション その30

朝日新聞が揺れていますね。

東京電力福島第一原発事故について5月20日付朝刊で報じた記事を取り消し、読者と東京電力の関係者に謝罪。

吉田調書「命令違反」報道、記事取り消し謝罪
www.asahi.com/articles/ASG9C7344G9CULZU00P.html?iref=com_alist_6_02

これに先立って朝日新聞社は、韓国・済州島で慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏(故人)の証言を虚偽と判断し、関連記事を取り消しました。

これに加えて慰安婦特集について論評した池上彰氏の連載コラムの掲載を見合わせた判断をして各方面から批判を浴びました。

「朝日新聞の終わり」とも称される一連の問題、どう自社の評判を回復していくのか。

その仕事ははなはだ難しいと思わざるを得ません。

何といっても32年間訂正できなかったわけです。その蓄積と体質はちょっとやそっとでは改善することは難しいというのは、私の意見。

解散して一同出直しという判断をすることはないでしょうから、少しずつダメージを受けながら沈んでいく可能性だってあるわけです。

そんな中一人、男を上げたのは池上彰氏。

朝日新聞:「掲載見合わせは間違った判断」とおわび記事
mainichi.jp/select/news/20140906k0000e040193000c.html

(池上彰の新聞ななめ読み)慰安婦報道検証 訂正、遅きに失したのでは
www.asahi.com/articles/DA3S11332230.html

独自の切り口で独自のやり方でただ一人で仕事に邁進する男、池上彰氏の在り方に今後大いに注目が集まりそうですね。

コーポレート・レピュテーション その30

現在は畑中鐵丸法律事務所著『企業のネットトラブル対策バイブル』を取り上げています。今回が13回目、最終回になります。

※『企業のネットトラブル対策バイブル』は書名が長いのでここからは『ネットトラブル対策』とさせていただきます。

最後は『ステルスマーケティング』について。

昨今、話題の「ステルスマーケティング」ですが、有力紙(朝日新聞平成21年5月1日付朝刊)が報道するところによれば、

企業の従業員や対価を得て活動する第三者等が、消費者に広告宣伝と気づかれないように、中立的な一般消費者を装いながら商品やサービスに関する情報を発信する行為

を指します。

主に、いわゆる「口コミ」サイトでよくみられる行為です。・・近年では、有名人のブログや動画共有サイト等を利用して、口コミ等が自然に広がるようなイメージで行われているパターンが多いようです。

これらについて、本書では、皆さんもよくご存じのゲートキーパー問題と「食べログ」やらせ事件を事例として取り上げています。

ゲートキーパー問題 
tinyurl.com/86jyunl

「食べログ」だけではない ネットでやらせがはびこる理由
www.nikkei.com/article/DGXNASFK0604E_W2A100C1000000/?df=3

「食べログ」やらせ事件で噴出した、ネット「他者不信」
www.nikkeibp.co.jp/article/column/20120123/296985/?rt=nocnt

などを事例として挙げています。

また、

さらに、最近では「逆ステマ」と呼ばれる手法も存在します。これも、相手方の政策上の欠点や人格上の問題点を批判して信頼を失わせる選挙戦術である「ネガティブキャンペーン」の例のように、古くからある手法ですが、最近では、口コミサイト等で、自社製品・サービスに対し、あえて低い評価や投稿を行ったりする手法が増えているようです。・・アメリカ合衆国では、早くからこの問題に取り組んでおり、平成21年12月に、連邦取引委員会が「ステマ」「逆ステマ」に関するガイドライン「広告におけるおける推薦及び証言の使用に関するガイドライン」を策定し、また法制化する等して、「広告」である旨の明示がなされていない口コミ等において、広告主と当該「口コミを行った者」との間の金銭等の便宜を禁止する等の取り締まりを行っております。

アメリカ連邦取引委員会の「ステマ」「逆ステマ」に関するガイドラインについてもう少し詳しく書くと、

米国連邦取引委員会は、

広告主からブロガーに対して商品・サービスの無償での提供や記事掲載への対価の支払いがなされるなど、両者の間に重大なつながりがあった場合、広告主のこのような方法による虚偽の又はミスリーディングな広告行為は、連邦取引委員会法第5条で違法とされる

「欺瞞的な行為又は慣行」

に当たり、広告主は同法に基づく法的責任を負う、との解釈指針を示している。

日本ではこれに該当するのが不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)で、消費者庁が平成23年10月に出した

インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項
www.caa.go.jp/adjustments/pdf/111202shiryo1_1.pdf

と、平成24年5月に出した上記の一部改定版があります。
www.caa.go.jp/representation/pdf/120509premiums_1.pdf

しかし、本書『ネットトラブル対策』では日本における

ガイドラインは法規性を有するものではありませんので、一律に禁止されたわけではありません

とした上で、

現行法制下では「ステマ」、「逆ステマ」を取り締まることは難しいと考えざるを得ません。

と結論しています。

これらを通じて、またこれまでの経験から私たちは、消費者に広告宣伝と気づかれないように、商品やサービスに関する情報を発信する行為をしない、すべきでないということですね。

私たち組織からの商品・サービスの無償での提供や対価の支払いがなされるなど、両者の間に重大なつながりがある上での虚偽の又はミスリーディングな「欺瞞的な行為又は慣行」も使用しない。

かつ、相手を誹謗中傷するような「ネガティブキャンペーン」も一切しない。

これははっきりしているのではないでしょうか。

また経営層からの売り上げやシェアに関するプレッシャーから社員がこうした「欺瞞的な行為又は慣行」を行おうとする風土を徹底的に排除していく社内文化の醸成も求められるでしょう。

てこは、少ない力で大きなものを動かすことができますが、その逆もまた真なりで、相手に向かっていたその力が自分に向かってくることは当然ある。

会社経営においててこを効かせたいと思うのは常でしょうが、「欺瞞的な行為又は慣行」によるてこは確実に自社に悪い影響を与えます。

「わかっちゃいるけど、やめられない」ということなんでしょうが、「欺瞞的な行為又は慣行」を土壌に咲く花は徒花であることは間違いなく長く咲き続けられないのですから。

★ 今週のテーマ 「消費者の煩雑な判断の代行業」

先日、マクドナルドの業績が発表され大きなニュースになりました。

ヒット商品がなく売り上げが落ち込んでいたところに、中国で起きた期限切れ鶏肉問題が追い打ちをかけたと。

マクドナルド、売上高25%減 期限切れ鶏肉追い打ち
www.asahi.com/articles/ASG995G1BG99ULFA02P.html
朝日新聞 吉田拓史 2014年9月9日

日本マクドナルドホールディングスは9日、8月の売上高(既存店ベース)が前年同月より25・1%減ったと発表した。単月では、2001年の上場以来、最大の落ち込みだ。

ヒット商品がなく売り上げが落ち込んでいたところに、中国で起きた期限切れ鶏肉問題が追い打ちをかけた。

日曜日の昼下がり、東京・自由が丘のマクドナルド。人気の「妖怪ウォッチ」のキャンペーン中とあって、小雨にもかかわらず路上にあふれるほどの客が並んでいた。

ただ、客の反応は芳しくない。月に数回来るという目黒区の主婦(34)は、2歳と8歳の息子を連れ、チーズバーガーセットなどを買った。

子どもは「チキンマックナゲット」が大好きだが、買わなかった。7月下旬にナゲットの仕入れ先の一つ「上海福喜食品」で、期限切れの鶏肉が使われていることが発覚した。

「自分で食べるのは構わないけど、小さい体の方が影響が出やすいと思って」と話す。ナゲットはタイ産に切り替わっているが、それでも「何となくためらう」。

3歳の息子を連れた世田谷区の会社員男性(41)は「こういう問題があれば、来る回数は減る」。

マクドナルドによると、8月は特にファミリー層が顧客の郊外店が苦戦したという。目立つのはナゲットなど、鶏肉商品の落ち込みだ。

ハンバーガー類に加えて買う「もう1品」が売れなくなっている。

6月まで14カ月連続で伸びていた客単価は7月に前年同月比でマイナスに転じ、8月は同9・8%減となった。そして来店する客数も同16・9%減った。1人あたりの売り上げも、来客も減るダブルパンチだ。・・

評判の意味を考える上ではとても考えさせられるニュースですよね。

期限切れ鶏肉問題だけの影響ではないにせよ、前年同月より売上高が25%減というのは会社経営にとっては衝撃です。

日本経済新聞は、料金の過剰徴収やマック本社の迷走とともにこんな内容の記事を掲載しています。

マクドナルド、現場を襲う負の連鎖
2014/8/25 日本経済新聞
www.nikkei.com/article/DGXMZO76012310S4A820C1000000/

・・・事件が日本で大々的に報じられたのは、夏休みが始まったばかりの火曜日のことだった。

週の平日は2割を超える減収となる店が続出。だが、影響の深さに店舗が震撼したのは週末のことだった。

「休日は家族客が増えるはずなのに、ぴたっと子供連れが消えてしまった」(東京都のファーストアシスタントマネージャー)

「子供がチキンを頼もうとすると、親が慌てて制止する」(宮城県のセカンドアシスタントマネージャー)

その週末、神奈川県の私鉄駅前にある店では、地元の祭りが開催されていた。だが、道はごった返しているが、店に人が入ってこない。

売上高は、かつての4分の1程度に低迷し、平日の売上高すら下回った。

「要するに、屋台の方が安全だと判断されてしまった」。

そう言って、ベテランの店員は肩を落とす。・・・

正直言って消費者がマックのナゲットを買わないで別の「安心」できるものを買って食べているとは思いません。

「屋台がマックより安全」と言えるのかと問えば、それも疑問でしょう。

スーパーにある冷凍食品のナゲットならマックより安全かと言われればこれまた疑問です。

なにが言いたいかというと、「真の食の安全性」が追求されているというより「安全に見えるか見えないか」の問題になってきているということです。

現在の私たちの口に入るものがどういう経路をたどって、どういう育てられ方をして口に入っているのか、調べればわかるものもあるけれど、あらゆるものを調べてはじめて料理をするとか口にする人はごくわずかでしょう。

それゆえマックだから大丈夫とか生協だから安全とか「安心できる業者」を選定し、そこからのものであれば「大丈夫であろう」という信頼関係に基づいて消費者は判断しているわけですよね。

「神戸牛」と謳ってそれが外国産の肉であることがわかれば大問題になる。

そもそもが外国産の牛肉を出されて「神戸牛」と思えるその舌が大いに問題となってもよさそうなものですが、それよりは「騙された」というほうにスポットが当たるのは供給側と消費者側の信頼関係で売買行為が成立しているからでしょう。

もっといえば、もはや消費者は「○○産」を見ているよりは信頼できるお店を探しているともいえるでしょう。

煩雑な判断の代行業とでも言いましょうか。

それゆえ、その信頼が裏切られた時の反動はものすごく大きなものになる。

情報社会が成熟して物品の流通経路を生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階まで追跡が可能な状態になっていますが、消費者はその上で自ら調べ追跡するのではなく、足を運ぶお店にすべての判断を任せる傾向は追跡可能になった今では逆により強くなっているようにも思います。

そういうことを背景に組織の評判というものの重大性は昔よりも大きくなっているというのが私の考えです。

現在、熟成肉がブームだそうですが、いずれどこかで大きな問題となると思います。

熟成肉ブームの裏に腐敗リスクあり 良質な旨味の見極め方は
NEWS ポストセブン 8月31日(日)
www.news-postseven.com/archives/20140831_274002.html

ここ数年、肉を一定期間寝かせてから食す「熟成肉」がブームになっている。

最近ではファミリーレストランの「デニーズ」が熟成肉のステーキを扱ったり、「吉野家」「松屋」といった牛丼チェーンが冷凍の牛肉から冷蔵熟成に調理方法を切り替えたりするなど、身近な外食でも味わえる機会が増えた。

しかし、飲食店関係者によれば、いつもリスクと隣合わせなのだという。

「熟成の仕方や期間などに明確な定義や規制がないため、店によって品質・安全管理がまちまちなのが現状です。

これだけ人気になっても消費者側の知識が乏しく、実際には”腐敗”一歩手前の肉を提供する店があっても、『これが熟成肉の特徴なんだ』と勘違いしているケースがある。

一度でも食中毒を出す店が出たら、熟成肉を提供するすべての店が打撃を受けることになるのです」(都内の焼肉レストラン店主)

熟成と腐敗は紙一重。それは・・・・

「これだけ人気になっても消費者側の知識が乏しく、実際には”腐敗”一歩手前の肉を提供する店があっても、『これが熟成肉の特徴なんだ』と勘違いしているケースがあると。

大いにあり得ることです。

私自身も含めてですが、それくらい私たちの舌はいい加減です。

対価を払っていれば、高級な肉と思い、腐敗手前の肉を熟成肉と勘違いして「うまい」と食べてしまうかもしれない。

正味の話、お店からしたら

「どうせ分かりっこないし!」

ってことなんじゃないでしょうか。そしてそういうことをしているお店は現にあることは産地偽装や様々なニュースで目にします。

しかし、供給側からいえば、消費者の煩雑な判断の代行業ですから、確かなものを確かな目で判断して正確にお出しする、それが役割であります。

それが評判を守ります。

マックの話のついでに紹介しますが、こういうニュースがしばらく前にありました。

消費者不安で「中国外し」=マック決定、他社は警戒
www.jiji.com/jc/zc?k=201407/2014072800543
時事通信 8月2日(土)

外食産業の「巨人」日本マクドナルドが、中国製鶏肉商品の販売をやめたことが波紋を呼んでいる。「チキンマックナゲット」を製造していた中国の「上海福喜食品」で、消費期限が切れた肉の使用が発覚し、安全性への不信感が高まったためだ。

現時点で他社は「『中国イコール悪』ではない」(外食大手)などとして、追随する動きはほとんど見られない。

しかし、消費者からの「中国外し」を求める圧力が強まる可能性も否定できず、各社は神経をとがらせている。

「えっ、本当ですか」。ファミリーマート関係者は、マクドナルドの決定を聞いて驚きの声を上げた。上海福喜から調達した「ガーリックナゲット」などを販売してきた以上、強い対応を迫られるのは必至だからだ。

マクドナルドが「中国外し」を決めた25日、中国の取引先に厳格な品質管理を求める方針を明らかにした。

マクドナルドも、最初から中国製の排除を決めていたわけではない。当初は、中国の別工場とタイに切り替える方針を打ち出していた。

しかし、22~25日の4日間で消費者からの問い合わせが1430件に上り、「中国で作っていることが不安を呼び、信頼が傷つく事態を放置できない」(幹部)と、タイ製への一本化に踏み切った。

サラ・カサノバ社長は決定に当たり「お客さまに提供する食事、またブランドに対する信頼が何よりも大切」と強調した。・・ただ、製造国を切り替えるだけで問題が解決するわけでもない。最近では、ベトナムから輸入した冷凍シシャモに毒性の強い薬剤などが混入。日本国内でも昨年末、アクリフーズ(現マルハニチロ)の冷凍食品から農薬が検出されるなど、食の安全を揺るがす事件は枚挙にいとまがない。

モスバーガーを運営するモスフードサービスの幹部は

「タイでも同様の問題は起こり得る」

と指摘し、同様の事態を防ぐには「チェック体制を強化するしかない」と話す。

大手牛丼チェーンも

「問題は国ではない。安全性をどう保証するかだ。中国からの調達を急にやめる必要はない」(広報)

との立場。

両社とも切り替えに否定的だ。

外食産業は消費者の低価格志向に応えるため、鶏肉加工品だけでなく多くの食材を中国に依存している。

一方、マクドナルドが中国製を切ったのも「お客さまの声が多かった」(幹部)ことが決め手になった。各社は、安全と安さの両立という困難な課題に直面している。

繰り返しになりますが、消費者の煩雑な判断の代行業としての価値が組織にはあります。

とてもきつい消費者からの要求だけれど、「安くて安全」なものを自信を持って提供する誇りが私たちには求められています。

その責務を負う覚悟のないものは市場から退場しなくてはなりません。

他者と横並びに判断する必要はないけれど、それぞれの組織が自信を持って提供できるものを提供することが評判を守ることになる。

社員が我が子に食べさせないようなものを売っている組織はいずれつぶれるでしょう。

教師が我が子を入学させたくない学校もなくなるでしょう。

我が子にどうするかを考えることが組織の適切な判断に導くのではないでしょうかね。

最後にこの記事を紹介して終わりにしたいと思います。

使用期限切れ鶏肉の問題が沸騰する中、日本ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)の定番メニューは国産でした。

日本KFCの業績は一貫して堅調というわけではない。だが創業時からのこだわりは時に経営リスクから企業を守る。・・・・生前のサンダース氏にこう言葉を掛けられたのを思い出す。
「日本だけが私の味を守ってくれている」

こだわり、それが評判を守る価値ではないでしょうかね。

守るべき価値のあるものを販売しているから苦しくても頑張れる。

そこに価値がないと逃げ出すのが人間の常ですからね。

ぜひお読みください。

期限切れ肉問題で生きた 日本KFCの「戦い」
2014/9/8 日本経済新聞
www.nikkei.com/article/DGXLZO76752490X00C14A9SHA100/

ケンタッキーフライドチキン商品 原産地情報2014年9月4日現在
www.kfc.co.jp/menu/pdf/OR_native_140904.pdf

皆さんからの率直なご意見をお待ちしております。

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