“ハラスメント”での評判悪化はコスト増!全社あげての対策が必要

いまや全部「○○ハラ」

最近の世の中はとかく「○○ハラ」が氾濫しています。これだけ目にするってことは、もう市民権を得て、世間の常識に定着したと考えてもいいでしょう。

「セクハラ」「パワハラ」は聞いたことがあるでしょう。では、「マタハラ」「オワハラ」はどうでしょうか。「そんな質問、笑止千万。片ハラ痛いわ」なんて侮っていたらエライめにあいますので今回はそのあたりに触れてみます。

「ハラ」は「いじめ」

「○○ハラ」の「ハラ」はいうまでもなく「ハラスメント」の略語で、大阪医科大学による定義によれば、【いろいろな場面での嫌がらせ、いじめを言います。その種類は様々ですが、他者に対する発言・行動等が本人の意図には関係なく、相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えることを指します】とあります。

まだ結婚しないの?

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「ハラスメント」を考える際にぜひ押さえておいてほしいポイントは「本人の意図には関係なく」というところです。

「彼氏はいないの?」「まだ結婚しないの?」現在ではこれらの発言は時と場合によって、セクハラに認定されます。なぜなら、発言者の「意図するしないにかかわらず、相手が不快に思い、相手が自身の尊厳を傷つけられたと感じるような性的発言・行動」であれば、セクハラになりうるからです。

「パワハラ」は、「パワー・ハラスメント」の略で「職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」をいいます。
「セクハラ」も「パワハラ」も見ていただいたらわかるようにその境界線が曖昧で、ゆえに裁判等でその判断が争われる事例が頻発しています。

例外は認めず

新しい判断基準がこのほど示された「マタハラ」とは妊娠や出産を理由にした女性への差別「マタニティーハラスメント」のこと。
女性の社会進出が進む中、「男女雇用機会均等法」「育児・介護休業法」では、妊娠・出産・産休・育休などを理由とする、解雇、異動、減給、降格などの不利益な取扱いを行うことは例外に該当する場合を除き、原則として禁止され、法違反になるとされてきました。

「一年契約で更新されてきたが、妊娠を伝えたところ、次の契約更新はしないと言われた」「妊娠を伝えたところ、遠隔地への異動を命じられた」「上司から、産休・育休は取れないと言われた」などはこれまでも原則禁止でしたが、例外があって、たとえば「経営悪化」や「本人の能力不足」、また「事業主から適切な説明があり、労働者が十分理解した上で応じるかどうかを決められた」場合は不利益な取扱いも認められるとこれまではされてきました。

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※厚生労働省:数字で見るパワハラ事情-パワーハラスメントの内容-

「マタハラ」新基準

しかし、2014年10月、具体的にどのような場合に違法となるかの判断が最高裁で初めて示されました。
最高裁が示した「例外に該当する」のは、

◆女性が自由な意思に基づいて承諾したと認められる場合
◆円滑な業務運営や人員の適正確保の面から支障が出るなど「特段の事情」がある場合

この2点に制限されると。この判断は、妊娠・出産・産休・育休などを理由とする不利益な取扱いが認められるケースは、ほとんど認められることはないということです。
厚生労働省はこの最高裁の判決・判断を受け、2015年2月に「妊娠や出産」と「企業が解雇や降格などを行った時期」が近ければ「因果関係がある」として原則「マタハラ」に当たると判断、違法とみなすとして明確化、新たな通達を出しました。

これがこれからの基本ラインになることを考えれば、貴社の従業員に対する早急なルール作りが求められるとともに、経営トップ層にはマタハラに関する新たな認識が必要になってくるでしょう。

情熱や熱意が裏目になる「オワハラ」

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もう一つの「オワハラ」について。「オワハラ」とは、主に企業が学生に対して、内定を出す代わりに「就職活動を終わらせることを強要する」行為のことを指します。
採用や就活についての企業の学生への対応や言ったことは、これからはすべて「公」になっていくという認識が必要です。

採用・人事担当者が学生に内定を出す代わりに他社へ辞退の連絡を入れさせたり、就活を続けていると内定を取り消すと脅したりするいわゆる「オワハラ」は、社内の担当者が学生に「ぜひ我が社へ」というある種の熱意を持っていたとしても、ハラスメントとされれば、それは企業全般の評判に影響、いや直結していきます。

影響は業績や人材採用難に

今、ブラック企業だと噂されたり、指弾されている企業は、業績や人材採用に大きな困難を抱えています。かなりの高賃金でも社員やアルバイトを雇えないという問題が出ている企業もある。

世間やネットによるブラック指弾はある種の噂や確定しない評判で、その実態が外部の者にはわからないことも多々あります。しかし、それが今、内部からの告発で明らかになり、世間に届くようになったのです。その影響はじわじわと企業に効いてくる。

評判悪化はコスト増

ここまで紹介してきた「○○ハラ」を含めて各種ハラスメントは、現在はまだその判断が微妙で境界線が曖昧ですが、各省庁からの通達、裁判の判例を通じてこれから徐々に明確になっていくでしょう。

「セクハラ」「パワハラ」「マタハラ」「オワハラ」の行為は外部に届けば、それはすべて企業のコストの増大に直結します。社員を雇うコスト、企業自身や商品を理解してもらうコスト、ハラスメントなどは行っていないと声高に告知するコスト、企業のあらゆる活動のコストは跳ね上がる。私たちが会社の評判はすべての企業活動に直結すると主張するゆえんです。

もはやヤバイことは隠して穴に埋めておけばいいという考え方は通用しなくなりました。経営トップ層がきちんと認識しているだけでも通用しません。企業全体で、社員全員がこの時代の動きを把握し、襟を正し、「本人の意図には関係なく」、ハラスメント、つまり嫌がらせやいじめを行わないという宣言とともにそれを世間に証明していかないといけない時代になりました。

すべての社員の行為が企業の評判を担っています。それはある意味では最高に緻密で精緻な自然淘汰の仕組みとも言えます。適応したものだけが生き残れるのです。

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