
違法性の高い誹謗中傷の書き込み事例5選!具体的な対応方法や犯罪が立証されたケースを紹介
- 誹謗中傷
インターネットの普及により、誰でも気軽に意見を発信できる一方で、悪意ある誹謗中傷の書き込みが深刻な問題となっています。名誉毀損や侮辱など法的責任を問われたケースもあり、放置すれば心身や社会生活に大きな影響を及ぼすこともあるため、適切かつ迅速な対応が必要です。
総務省の「違法・有害情報相談センター」の相談件数は年々増加しており、令和5年度に過去最多を記録しました。また検察庁においても、名誉毀損罪・侮辱罪の検挙件数は増加傾向にあります。今回の記事では、違法性が高いと判断された誹謗中傷の事例を紹介します。また誹謗中傷への対応事例や罪に問われたケースも紹介するので、万が一被害を受けた場合に備えて、ぜひ参考にしてみてください。
誹謗中傷とは?定義と法的位置づけを解説

近年、インターネットやSNSの普及により、個人が自由に意見を発信できる社会が実現しました。一方で根拠のない悪意ある発言や、人格を攻撃する言葉が拡散される「誹謗中傷」の問題も深刻化しています。
SNSや掲示板などは匿名性の高さと拡散力の強さにより、1件の投稿が取り返しのつかない被害を生む事例も発生しています。この章では誹謗中傷の定義と法的位置づけを解説するので、被害を受けた際に冷静な対応が取れるよう正しく理解しておきましょう。
誹謗中傷の定義
誹謗中傷とは他人の名誉や信用を傷つけることを目的として、虚偽の情報や相手を侮辱するような言葉を第三者に伝える行為を指します。似ている表現として批判がありますが、誹謗中傷とは大きく異なります。
批判は行動や意見に対して不満や疑問を表明することで、建設的な提案として行われる発言です。そのため批判は事実や根拠に基づいて行われ、より良い結果を期待する気持ちが含まれています。批判は相手に対する敬意を持ち、冷静で理性的な表現で伝えている点が誹謗中傷との違いです。過度に攻撃的で相手を傷つけるような発言や、社会的評価を低下させる内容の場合は、誹謗中傷に該当します。
誹謗中傷の法的位置付け
誹謗は「相手の悪口を言うこと」、中傷は「根拠のない発言で相手を傷付けること」を意味します。どちらにも共通していることは「相手を傷付ける発言」である点であり、法律上では名誉毀損罪や侮辱罪などに該当する可能性が高いです。
誹謗中傷は、民事上では名誉毀損に基づく損害賠償請求の対象となり得ます。民事訴訟を通じて、被害者は誹謗中傷によって受けた精神的苦痛や、名誉の低下に対する損害賠償請求が可能です。近年はインターネット上の誹謗中傷が問題視されており、法的に対処する手段が整えられています。
SNSや掲示板などインターネット上での悪質な誹謗中傷が社会問題として深刻に受け止められた結果、侮辱罪(刑法231条)が厳罰化されました。2022年7月7日に施行された改正刑法は、以下のとおりです。
改正前 | 改正後 | |
法定刑 | 拘留(30日未満)または科料(1万円未満) | 拘留または科料に加え、懲役1年以下・禁錮1年以下または30万円以下の罰金 |
公訴時効 | 1年 | 3年 |
逮捕の可能性 | 原則困難(軽犯罪扱いのため) | 可能性あり(より重い刑が設定されたため) |
社会的背景 | 軽微な侮辱行為への対応が中心 | SNS上の悪質な誹謗中傷への対応強化が目的 |
抑止力・法的対応の効果 | 限定的 | 抑止力の強化刑事責任追及の容易化 |
また投稿者特定の手続きも簡素化され、2022年10月1日施行の改正プロバイダ責任制限法により「発信者情報開示命令」が導入されています。さらに2025年4月1日施行予定の「情報流通プラットフォーム対処法」では、大規模プラットフォームに対して削除対応や透明性確保などの義務が課され、より実効性ある対応が期待されています。
違法性の高い誹謗中傷の書き込み事例5選

誹謗中傷はすべてが違法となるわけではありませんが、名誉毀損や侮辱などの犯罪行為に該当する場合があります。この章では違法性が高いと判断される誹謗中傷の書き込み事例を5つ紹介するので、どのような言動が法的に問題があると判断されるのかを理解しておきましょう。
虚偽の情報
虚偽の情報とは、意図的に述べられた「事実に反する」または「存在しない」内容などです。虚偽の情報が流されることで被害者は社会的信用や名誉を失い、精神的な苦痛を受けます。虚偽の情報を広めることによって他人の名誉や信用を不当に傷つける行為は、名誉毀損や侮辱罪に該当する可能性が高いです。
例えばある人物が犯罪を犯した、または不正行為をしているという内容が虚偽であるにも関わらず、他人に伝えることは極めて悪質な誹謗中傷です。そのため、加害者には法的な厳しい処分が課せられます。
社会的評価を下げる内容
社会的評価を下げる内容とは、他人の社会的地位や信用を貶めるような事実または虚偽の情報を指します。個人の仕事に関連する評価や職業的な信用を低下させるような内容、または所属する団体や社会的なグループの評価を下げることを目的とした誹謗中傷は、法的処分の対象となる可能性が高いです。
例えば、誰でも閲覧できるSNSやインターネット上で「不倫している」という事実を書き込むことは、相手の社会的評価を下げる内容として認められる場合が多いです。事実であってもなくても、社会的評価を下げる内容を多くの人に伝達することは「名誉棄損罪」に該当します。そのため、被害者は刑事上または民事上の責任を加害者に追求できます。
侮辱する発言
侮辱する発言とは、相手を社会的に貶める言葉や軽蔑するような発言を指します。侮辱罪は他人を公然と侮辱する行為を処罰するもので、事実が真実であるかどうかに関係なく「相手を貶める言葉や軽蔑する発言」が該当します。
そのため事実に基づかない場合でも、相手を公然と侮辱して名誉を傷つけることを目的としている場合は、法的処罰の対象となる可能性が高いです。特定の人種や性別、さらには宗教・国籍などに対する差別的な言葉を使うことも侮辱にあたります。侮辱的な言葉が精神的苦痛を引き起こすようであれば、被害者は民事訴訟を通じて損害賠償の請求が可能です。
人格を否定する投稿
人格を否定する内容とは「ダメな人間だ」「無能だ」など、相手の人間性を根底から否定する発言を指します。人格を否定する投稿は精神的な苦痛を与えるだけでなく、相手の社会的立場や人間関係に深刻な悪影響を与えることがあるため、法的処罰の対象となる可能性が高いです。
人格や性格を攻撃する発言は、名誉棄損罪や侮辱罪に該当します。そのため、被害者は加害者に対して法的責任の追求が可能です。また、虚偽の内容や根拠のない攻撃により相手を否定する投稿は、より違法性が高い誹謗中傷と判断されるでしょう。
悪質なレビュー
インターネットを通じて商品購入やサービス利用をする際に、レビューを参考にする消費者は多いです。率直な意見や使用感を投稿しているレビューは、購入時の意思決定に大きな役割を果たす一方で、不当な評価や攻撃的な発言など悪質な書き込みが問題視されています。社会的信用や名誉を傷つけることを目的とし、意図的に企業や商品を貶める発言をしているレビューは違法になる場合があります。
悪質なレビューは他の消費者に対して誤った情報を与え、商品やサービスだけでなく企業の信頼性を低下させるからです。悪質なレビューが虚偽の内容や企業の信用を著しく損なうものである場合「信用毀損罪」や「業務妨害罪」に該当する可能性があります。企業は発信者情報開示請求を通じて投稿者の特定を試み、削除請求や損害賠償請求、さらには刑事告訴などの法的措置を検討することが可能です。違法性が明確な場合は、早期の対応が被害拡大の防止につながります。
誹謗中傷への対応事例

この章では、実例をもとに誹謗中傷への対応を紹介します。匿名の投稿でも、相手を特定して起訴に至ったケースもあります。万が一被害を受けても、適切に対応すれば相手に法的責任を追及することが可能です。
嘘の投稿に対する賠償請求
ある大学教授の発言に関するデマをSNSに投稿した学生に対して、損害賠償請求が下ったケースです。大学教授が作成したとみられるスライド資料の画像と共に、発言が真実であるかのようにSNSで拡散されました。大学教授は投稿にある発言はしていないと主張し、SNSによって拡散された虚偽の情報で損害や権利侵害が発生したと訴えた事例です。
大学生側は「大学教授の発言を投稿しただけ」と主張しましたが、虚偽の情報であることが裁判によって認められました。また、複数のまとめサイトで該当の投稿が引用されていることから、大学教授が損害や精神的苦痛を受けたことへの寄与が大きいという裁判所での判決です。大学生に対して慰謝料20万円と、弁護士費用10万円の支払い命令が下りました。
悪質な書き込みに対する刑事告訴
高速道路で起きたあおり運転が招いた死傷事故において、無関係の人物がインターネット上の掲示板で、犯人の家族であると書き込まれて誹謗中傷を受けた事例です。全く無関係であるにも関わらず、インターネット上だけでなく代表を務める会社の運営にまで影響が及びました。
後に投稿者の一部が特定され、名誉毀損の疑いで書類送検されています。当初は不起訴とされましたが検察審査会の議決を受け、一部が起訴されました。最終的には名誉毀損罪が成立し、罰金刑が科されています。誤情報によるインターネット上の誹謗中傷は、現実社会に深刻な影響を及ぼす危険性を示しています。
名誉棄損に該当するつぶやきに対する削除依頼
ある企業に対して「ゴミ」「不正をしている」などという投稿を繰り返していた労働者に対して、信用毀損に該当する旨を伝えて削除依頼を行ったケースです。該当のアカウントを精査した結果、他の投稿内容から労働者の特定に至りました。労働者に直接確認したところ、自分であることを認めて速やかに問題の投稿は削除されています。
誹謗中傷が犯罪になった事例

この章では、誹謗中傷が犯罪として認められた事例を紹介します。悪質な書き込みや攻撃的なコメントには、毅然とした対応を取ることが大切です。実際に罪として認められた事例もあるので、万が一誹謗中傷を受けた際は適切な対応を検討することが重要です。
名誉毀損で逮捕
当時高校3年生に対し、無職の少年が誹謗中傷を行ったとして名誉毀損の疑いで逮捕された事例です。2015年夏ごろから約1年に渡ってSNS上で高校生を中傷する内容の投稿を行い、精神的苦痛を与えてきたとされています。
被害者の高校生は父親と共に警察署に相談に行きましたが、その翌日自ら命を絶ってしまいました。被害者の父親により被害届が出され、警察は犯人逮捕に向け捜査に入ります。誹謗中傷を行っていた無職の少年は容疑を認め、無事犯人逮捕に至りました。
侮辱容疑で書類送検
匿名掲示板上で、女性タレントに対して誹謗中傷を行っていた女性2人が侮辱の容疑で書類送検された事例です。「気持ち悪い」「流産しろ」など多数の誹謗中傷が書き込まれていたため、女性タレントは該当の匿名掲示板に開示請求を行って投稿者を特定しました。2人に対して刑事・民事の両方で訴えを起こし、侮辱容疑で書類送検されています。
まとめ

悪質な書き込みや攻撃的な発言は、名誉毀損罪や侮辱罪に該当する可能性があります。自社の社会的評価を低下させる投稿や発言を発見した場合は、然るべき対応をとることが大切です。特に悪質な書き込みに対しては、刑事または民事で加害者に責任追及できます。しかし、法的措置をとる場合は時間とお金がかかります。
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