誹謗中傷とは「相手の社会的評価を不当に傷つけること」受けた際に取るべき対応を解説

SNSや口コミサイトなど情報が瞬時に拡散する現代において、企業が誹謗中傷の標的となるリスクはますます高まっています。取引先や業界関係者の信頼が事業継続の鍵を握るため、小さな書き込みでも放置すればブランド価値や信用に深刻な影響を与えかねません。

そこで今回の記事では、誹謗中傷が増加している原因や企業の信頼を守るための対応策を紹介します。誹謗中傷が増加している原因や犯罪として成立する要件なども解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

誹謗中傷とは?批判との違いを解説

SNSやオンラインメディアの発展により、企業や個人が誹謗中傷の被害を受けるケースが増加しています。しかし「誹謗中傷」と「正当な批判」は一見すると区別がつきにくく、対応を誤ると炎上拡大や企業の信用失墜などを招く恐れがあるためお困りの方は多いのではないでしょうか。そこでこの章では、誹謗中傷と批判の違いを解説します。

誹謗中傷とは「相手の社会的評価を貶めること」

誹謗中傷とは、侮辱や嫌がらせ、デマ情報などを使って、相手の名誉や人格を傷つける一連の行為を指します。

これが難しいところで、例えばあなたが「嫌だ」と思っても、裁判所が「社会的評価を貶めていない」と判定すれば、誹謗中傷にならないこともあります。

例えば、

あなたがA社の社長で、「A社の社長は、Fラン大学出身」、などと掲示板に書かれたとします。あなたは、できればFラン大学だということはあまり公にしたくない、と思っていますが、この投稿が誹謗中傷だと認定してもらえるか?というと難しいところです。あなたは「Fラン大学出身」と言われたくないと思っていても、世間から見ると、「有名大学卒業ではないのに会社の社長をしているなんてすごい!」と思われるかもしれません。つまり、「Fラン出身」ということによって、あなたの評価が貶められているとは言えないのです。

誹謗中傷と認定されるかどうかは、原則として「裁判所の判断」によるもの。

あなたや、投稿した人の主観で決まるものではないのです。

だから、相手の悪口や根拠のない噂を広めるならば、それなりの代償を支払う覚悟が必要です。

「そんなつもりではなかった」は通用しません。

昨今は、インターネット関連法は、どんどん替わってきています。(2022年改正個人情報保護法や2023年発信者情報開示の簡素化など。)

判例によって、いままで問題が無かったものでも、今日この瞬間から、問題視されるかもしれません。

その内容だけでなく、及ぼした影響に対して、法的手段を講じることが可能(損害賠償請求)ですから、加害者の法的責任が認められれば、刑事罰が科されることもあれば、金銭的な損害賠償請求を受ける可能性があります。

そして、インターネット上の誹謗中傷は「不法行為」に当たるので、損害賠償請求を逃れようと、仮に自己破産をしたとしても、弁済から逃れることはできません。

批判との違い

批判とは、事柄や行動または意見に対して問題点や改善すべき点を指摘する行為です。批判は相手を傷つけることが目的ではなく、建設的な意図があります。批判は事実に基づいて対象の内容や行動に対する具体的な評価を行うものであり、目的は行動の改善や事実を踏まえた冷静な判断を促すことです。誹謗中傷と批判は、目的と内容の正当性が大きく異なります。

誹謗中傷が増加している原因

現在はSNSをはじめとするオンラインプラットフォームの普及により、個人が自由に情報を発信できる環境が整っています。一方で匿名性や即時性といった特徴が誹謗中傷の拡大を助長し、社会問題となっています。この章では、誹謗中傷が増加している背景や要因について理解しておきましょう。

SNSの手軽さと匿名性の高さ

SNSはスマートフォンやパソコンを使って誰でも簡単にアクセスできるため、手軽に情報発信を行うことが可能です。個人が自分の意見や感情をリアルタイムで広範囲に発信できる場として、多くの人々がSNSを利用しています。手軽に利用できる便利なツールですが、冷静さを欠いた発信も多くなるため誹謗中傷を引き起こしてしまいやすいです。

SNSは、ユーザー名やプロフィールに本名を使う必要がありません。匿名であれば相手に対する直接的な責任感が薄れ、自分の言動に対する懸念や罪悪感を感じにくくなる傾向にあります。顔を合わせた状況では言いにくい言葉や攻撃的な表現も容易に発信できるため、SNSでは誹謗中傷が蔓延しやすいです。また、匿名での投稿は加害者の特定が難しく、誹謗中傷が増加する一因となっています。

ユーザーのネットリテラシーの低さ

ネットリテラシーとは、インターネットを安全かつ適切に利用するための知識やスキルを指します。ネットリテラシーが低いと情報の真偽を正確に判断する能力が不足し、事実確認をせずに他人の名誉を傷つけるような内容を拡散してしまう場合があります。また、発言がどれだけ多くの人に届き、どれほど大きな影響を与えるかを理解していない利用者が多いです。

オンライン上でのコミュニケーションの特性を理解せず、軽い気持ちで誹謗中傷を行ってしまうケースがあります。ネットリテラシーが不足していると無意識に他人を傷つけたり、誤った情報を広めたりしていることに気づけません。インターネットを利用する人のネットリテラシーの低さは、誹謗中傷の増加につながっています。

誹謗中傷を受けた際に取るべき5つの対応

誹謗中傷の被害を受けた際は適切な対応を取り、被害が拡大しないよう対処することが大切です。冷静に状況を見極め、法的手段も視野に入れた正しい対応を行いましょう。この章では誹謗中傷を受けた際に取るべき対応について解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

誹謗中傷の証拠の確保

証拠を確保しておくことで、誹謗中傷が行われたことを証明できます。証拠として有効なのは、以下のようなものがあります。

  • スクリーンショットや画面録画
  • WebページのURLやリンク
  • メールやメッセージ
  • 録音

証拠があれば法的手段を講じる際に強い支えとなり、相手に対して適切な対応が可能です。誹謗中傷に直面した際には冷静に証拠を収集し、手続きを踏むための準備を行いましょう。

投稿の削除依頼

インターネット上で誹謗中傷が行われると、拡散されることで被害が大きくなるため、できる限り早期に削除を依頼することが重要です。速やかに削除してもらうことで被害の拡大を防ぎ、精神的・社会的な影響を抑えることにつながります。多くのSNSやオンラインプラットフォームにある、誹謗中傷や違反行為に対する報告・通報の機能を利用して投稿の削除依頼を行いましょう。

ただし投稿を削除してもらうためには、誹謗中傷の内容がサイトやSNSの利用規約に違反している必要があります。事前に利用規約やコミュニティガイドラインを確認し、ルールに反している点を明確に伝えましょう。削除依頼を行う際には、誹謗中傷の詳細な情報を伝えることが大切です。伝える内容は、以下のような点をまとめておくと良いです。

  • 誹謗中傷の内容
  • 投稿のURL
  • 具体的な日時
  • 投稿者の情報
  • 証拠の添付

ただし、必ずしも削除依頼が受け入れられるとは限りません。初回の削除依頼が否認された場合でも、再度申し立てすることで再評価してもらえる場合があります。追加の根拠や被害内容を集めたうえで、改めて申し立てると良いでしょう。

発信者情報開示請求

発信者情報開示請求を行うことで、匿名で誹謗中傷を行った相手の情報を特定できます。インターネット上での匿名性を利用した悪質な誹謗中傷に対して、法的に対応するために必要な手続きです。発信者情報開示請求の手続きは個人でも可能ですが、専門性が高いため弁護士に依頼するのが一般的です。誹謗中傷を受けた被害者は精神的にも疲弊している場合が多く、自分で対応を続けるのは大きなストレスになります。

弁護士が被害者に寄り添い、専門的にサポートしてくれることで「味方がいる」という安心感が得られます。また弁護士を通じて行うことで必要な書類や証拠集めがスムーズに進み、投稿の削除や謝罪の早期実現が可能です。発信者情報開示請求が認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 誹謗中傷が違法行為であること
  • 誹謗中傷の内容が証拠として十分に確保されていること
  • 他に適切な方法がないこと

法的に問題のある内容であり、発信者情報開示請求以外に加害者を特定するための手段がないことを示すことが重要です。

損害賠償請求

損害賠償請求は、誹謗中傷を受けた場合に加害者に対して金銭的な賠償を求める手段の1つです。主に、以下のような損害に対して賠償を求められます。

  • 精神的損害
  • 名誉毀損による損害
  • 経済的損害

誹謗中傷が名誉毀損や精神的な苦痛を引き起こしていれば、被害者は損害賠償を請求できます。損害賠償請求を行う際の基本的な流れは、以下のとおりです。

  • 証拠を収集する
  • 加害者に対して内容証明郵便を送る
  • 弁護士を通して請求する
  • 裁判を起こす

損害賠償請求を成功させるためには十分な証拠を集め、誹謗中傷が違法であることを証明することが重要です。また損害賠償を求めるには、実際に損害が発生していることを示さなければなりません。誹謗中傷によって「精神的な苦痛を受けた」「仕事や社会的立場に影響を与えた」など、具体的な損害を証明しましょう。

刑事告訴

刑事告訴は、誹謗中傷に対して法的に厳しく対応するための手段であり、加害者に対して刑事責任を問うための手続きです。誹謗中傷が名誉毀損罪や侮辱罪に該当する場合に、加害者を刑事責任で処罰することを目的として告訴します。刑事告訴は加害者に対して刑事責任を問う手段ですが、金銭的な賠償を直接得るための方法ではありません。

誹謗中傷が犯罪に該当することを証明できる証拠を十分に集め、警察に対して告訴状を提出します。証拠を集める際は日時や発信者情報など、詳しい内容がわかるように整理しておくことが大切です。警察が捜査を行った結果、加害者の行為が犯罪であると判断された場合に検察に送検されます。

検察は警察が捜査した証拠をもとに、起訴か不起訴かを決定します。加害者の起訴が決定すると、次は刑事裁判です。裁判では検察官が提出した証拠や証人の証言などをもとに、加害者が行った誹謗中傷が罪になるかを慎重に審理します。裁判で有罪が確定すると加害者は刑事責任を問われ、罰金や懲役刑などの刑罰が科されます。

誹謗中傷が犯罪として成立する要件

SNSや掲示板などを通じた誹謗中傷は単なる迷惑行為にとどまらず、内容や状況によっては犯罪として処罰の対象となる場合があります。しかし、すべての誹謗中傷が直ちに刑事事件になるわけではありません。この章では、誹謗中傷に関連する主な犯罪の成立要件について解説します。

名誉毀損

名誉毀損は誹謗中傷によって他人の社会的評価を低下させ、名誉を傷つける行為として刑法や民法で定義されています。誹謗中傷は名誉毀損に該当する言動の1つと考えられており、法律上の違法行為と判断された場合は加害者に対して法的措置を取ることができます。名誉毀損の成立要件は、以下のとおりです。

  • 虚偽の事実の公然性
  • 他人の名誉を毀損する意図
  • 社会的評価の低下

名誉毀損が成立するためには、他人の社会的評価を低下させる内容が「事実ではない」ことがポイントです。そのため、誹謗中傷によって被害者の社会的評価が実際に低下したことを証明しなければなりません。虚偽の事実が広まったことで周囲の人々に影響を与え、被害者が仕事や人間関係において不利益を被っている必要があります。

侮辱

侮辱とは他人を不当に貶め、軽蔑するような発言や行動を指します。名誉毀損と同様に侮辱も他人の名誉や社会的評価を傷つける行為であり、誹謗中傷が該当する場合には法的措置を取ることが可能です。侮辱は刑法上で明確に規定されている犯罪であり、名誉毀損とは異なる要件で成立します。侮辱罪が成立する要件は、以下のとおりです。

  • 侮辱的な言動
  • 公然性
  • 名誉を傷つける意図

名誉毀損が虚偽の事実を広める行為であるのに対して、侮辱は「事実に基づくかどうか」に関係なく、単に相手を軽蔑するような言葉や行動があれば成立します。誹謗中傷が侮辱に該当する場合、被害者は刑事告訴や民事訴訟を通じて加害者に対して法的措置を取ることができます。

信用毀損

信用毀損は、他人の「信用」に関わる損害を指します。信用毀損はビジネスや社会的な信頼、または経済的な信用を損なったかが問題のポイントとなります。信用毀損の成立要件は、以下のとおりです。

  • 虚偽の情報
  • 公然性
  • 信用の損失

信用毀損は、他人の社会的信用を低下させる虚偽の事実を広めることによって成立します。信用毀損が成立するためには、実際に相手の社会的信用や経済的信頼が損なわれたことを証明しなければなりません。信用毀損に対しては、民事および刑事の両方で法的措置を取ることが可能です。

脅迫

脅迫は、他人に対して恐怖や不安を与えることを目的とする違法行為です。脅迫の成立要件は、以下のとおりです。

  • 害悪の予告(生命・身体・自由・名誉・財産に対する)
  • 不安や恐怖を引き起こす意図
  • 害悪を加える意思があるか、または加えると信じさせること

発言や行動で強い恐怖感や不安感を与えられた場合は、脅迫に該当する可能性があります。脅迫罪が成立するためには、害悪を加えるという「具体的な言葉」が使われているかがポイントです。脅迫者が実際に害悪を加えていなくても、相手に危害を与えると告げることで脅迫罪が成立します。また冗談のつもりであっても、相手が恐怖を感じていれば十分に争点となり得ます。

プライバシーの侵害【民事的不法行為】

プライバシーの侵害とは個人の私的な情報や権利が無断で他者に公開され、自由や尊厳が侵されることを指します。現代の情報社会ではSNSやインターネットを通じて無断でプライベートな情報が拡散されるケースが増えており、プライバシー侵害に対する意識が高まっています。プライバシーの侵害が成立する要件は、以下のとおりです。

  • 個人情報や私生活に関する不当な公開
  • 公開が不当であること
  • 個人の生活に対する不当な干渉

プライバシー侵害の主な要件は、個人の私生活や情報が「無断で公開されること」です。相手の同意を得ていない情報の公開は、プライバシー侵害に該当します。民事で法的措置を取ることはできますが、プライバシーの侵害のみでの刑事罰はありません。ただし、名誉毀損に該当すれば刑事上の責任を追及できる場合があります。

まとめ

誹謗中傷は他人の名誉や信用を傷つけ、社会的な影響を与える悪質な行為です。インターネットやSNSの普及により誹謗中傷はますます増加しており、被害を受けた人々にとっては精神的な苦痛や社会的な影響をもたらしています。誹謗中傷に対しては、適切な法的対応を取ることが可能です。誹謗中傷に直面した場合には冷静に証拠を集めて、投稿の削除依頼や発信者情報開示請求など、適切に対処しましょう

「ソルナ株式会社」は、風評被害対策を請け負う専門機関です。ブランドドクター1級を持つ専門家が、問題を的確に分析・対応して迅速にトラブルを解決します。インターネット上のトラブルでお困りの企業さまは、下記のお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

お問い合わせフォーム

風評被害の教科書 の他の記事